佐藤克巳

酔いどれ天使の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

酔いどれ天使(1948年製作の映画)
5.0
黒澤明監督の映画スタイルが完成したヒューマンドラマの傑作。酔いどれ天使を自称する不遇の医者志村喬と結核を患い組若頭の地位を脅かされた三船敏郎の虚勢の張り合いがいつしか共感する仲になるが、泡が湧き出る湿地に立つマーケットの人間模様が絡み、出所後のさばり返る兄貴分山本礼三郎との情婦木暮実千代を巡る争いで三船が刺し殺される。掃き溜めの鶴女学生久我美子の結核全快祝いに、約束のあんみつを食べに行く嬉しそうな志村、終。黒澤と初タッグ三船の痩せこけた亡霊の様な熱演に、早坂文雄の効果的な音楽が素晴らしく、笠置シズ子「ジャングル・ブギ」に併せてダンスを踊る三船に戦後の熱気が象徴されていた。ただ気掛かりな点は、逮捕された山本は正当防衛にならないのか?そうすると志村に匿われている看護婦中北千枝子の問題解決にはなっていない?
佐藤克巳

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