Kientopp552

北ホテルのKientopp552のレビュー・感想・評価

北ホテル(1938年製作の映画)
5.0
 この「Hôtel du Nord」荘には、『天井桟敷の人々』で主役ガランス役を演じることになるArlettyアルレティーが娼婦役で登場する。彼女の、いつも不機嫌なヒモを演じるのがLouis Jouvetジュヴェーである。彼は、前年の犯罪コメディー『可笑しなドラマ』では、ベッドフォード司教役を演じ、観る者を笑わせようとはしないのに、観る方が笑ってしまう、グロテスクさが醸しだす、ある種の滑稽さを体現して秀逸であった役者である。実は、本作では、蓋し、このJouvetこそが主役であり、「ヒモ」という反社会的存在が、実は純真な心の持ち主であり得るというメッセージを本作は発する。さすがはフランス的な、人間観察の「オチ」を以って、何とも言えない余韻を残して、最後の「Fin」が現れるという趣向である。
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