三四郎

北ホテルの三四郎のレビュー・感想・評価

北ホテル(1938年製作の映画)
3.4
主演アナベラとジャン=ピエール・オーモンがルイ・ジューヴェとアルレッティに完全に食われている。主役の影が薄く印象に残らない。
『巴里祭』を観た時もそうだったが、1930年代のフランスのスター・アナベラに魅力を感じないんだよなぁ。何故、人気があったのかわからない。

『ミモザ館』と同様に『北ホテル』の主人夫婦もしっかり者で情に厚く深切だ。
フランス映画を見ていて思うのは、結婚前までは遊んで、結婚後は道徳心のある夫婦となるのか、あるいは、道徳心があるから結婚できたのか…。
しかし、子供のいる前で大人たちは夜の会話をして笑い合って、すごいな…。
DVDの解説に、この『北ホテル』が製作された1938年ごろ、日本では「フランス映画は退廃文化の象徴とされ、本作は輸入されなかった」と書いてあったが、さもありなんと思った。
まぁ、同時代のヘイズコードありし日のアメリカに比べたら、日本はまだ「性」に関して寛容な方だったのではないだろうか。

女を殴って女の目にあおじ作るなんて最悪な男だと思ったが、それでもその男と居続ける女も女だ。

IVCのDVDで観たが、特典映像が非常に充実した内容だった。
興味深かったのは、グランド・ホテル形式につながる解説。
「ホテルを舞台にした映画には名作が多い。その理由は、ホテルには人生の縮図が見られるからだろう」

「カルネは知らない俳優と仕事をしたがらなかった“アルレッティは品がない。ジューヴェは未知数だ。起用は難しいな。リスクが大き過ぎる”」しかし、カルネはこの映画でアルレッティに対する評価を一変させたようだ。
自伝に「この作品の魂はアルレッティだ。彼女の演技は台詞をはるかに超えた。辛辣で強烈な例の台詞はともかく、彼女は本領を発揮し演技派と認められた」
恐らくここで語られている「台詞」というのは、「田舎っぺが気分を語ってんじゃないわよ!気分なんかで片付けられてたまるもんか!“気分を一新”?そんなにあたしが目障り?だったら一人で釣りに行きなさいよ!」のところだろう。

70歳の時のアルレッティ本人のインタビューもあったが、歳をとらない顔だ。インタビュアーが何をどう質問したかわからないが、くだらないことを聞きやがってと怒っているような雰囲気だった笑 というわけで、女傑といった感じで畏怖を感じた。確かに品はないかもしれない笑
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