半兵衛

ダーティハリー4の半兵衛のレビュー・感想・評価

ダーティハリー4(1983年製作の映画)
3.3
前作で「裁かれない悪への怒り」と「現代の西部劇」という方向性を見失っていたダーティハリーシリーズだが、クリント・イーストウッド自らが監督が手掛けた本作では原典へと回帰しているようなハードな悪への暴力とムカつく奴をマグナムで爽快に殺害していくスタイルを80年代という時代に合わせつつ娯楽映画としてまとめあげる手腕はさすが。

そして本作の特徴の一つがいわゆるレイプ・リベンジどいうジャンルを取り扱っていることで、頑固そうでそうした女性が男性の暴虐に立ち上がり報復するという時代の流れに目敏く反応するのがイーストウッドの凄いところ。同時にデビュー作で女性ストーカーにしつこく狙われる男性を題材にしていた彼が復讐する女性視点のドラマを作り上げるのが興味深い。

冒頭の上から見下ろすショットなど、一作目を意識したかのような撮影が多いのも印象的。『ダーティハリー』シリーズの常連であるアルバート・ポップウェルが銃を持ってハリーに忍び寄る場面は一作目を知っているファンならニヤリとするはず。

名カメラマンブルース・サーティースによる夜の黒を生かした映像が素晴らしい、特に夜の遊園地でライトの光を浴びながらイーストウッドが出てくる場面のかっこよさ!

かつて自分と妹を暴行した犯人たちへと復讐するソンドラ・ロックが事件現場に訪れた刑事を見下ろす場面はロバート・アルトマンの『イメージズ』を思い出した、そう思うとこの作品は怒りで法の網をくぐる悪党を制裁する人間が二人に分裂しているようなことに気付かされる。後半ハリーが暴行犯の一人を警察へ強引に連れていき、ソンドラ演じるジェニファーが残ったもう一人を射殺するというまるで二人がぐるになって攻撃しているような不思議なやりとりも元はひとつだったものがお互いのやることを無意識に共有してやっていたと考えるとそれなりに納得できる。ただイーストウッドは娯楽映画を作ることをモットーにしている人間なので難解な作風にはせず、ちゃんと娯楽のセオリーを守って悪党を倒す爽快なオチをつける。

ただ終盤イーストウッドに悪党を攻撃する理由をつけようとしたためやや強引すぎる展開に、友人の黒人刑事は殺されるためだけに家に訪れたみたいになっているし。

あとラストは銭形平次みたい。

ハリーが飼っているブルドッグがコミカルでいい味を出している、あれをオチに絡めたらもっと良くなっていたはずなのに。
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