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パイレーツ・ロックのYYamadaのレビュー・感想・評価

パイレーツ・ロック(2009年製作の映画)
3.7
【音楽映画のススメ】
~ 音楽と映像の素晴らしき
   コラボレーション

◆作品名: パイレーツ・ロック (2009)
・作品のジャンル : ヒューマン・コメディ
・楽曲のジャンル : 60's UKロック

〈本作の粗筋〉 allcinemaより抜粋
・ブリティッシュ・ロックが世界を席巻していた1966年。民放ラジオ局の存在しなかい英国では、国営BBCラジオがポピュラー音楽を1日45分に制限。若者の不満が渦巻く中、法律が及ばない領海外の北海に、24時間ロックを流し続ける海賊ラジオ局「ラジオ・ロック」が誕生、熱狂的な支持を集める。
・ラジオ・ロックの不道徳な内容に不快感を露わにする英国の大臣は、何とか放送を中止させようと様々な方策に打って出るのだが…。

〈見処〉
①スイッチを入れたら、
 もう一人じゃない——
・『パイレーツ・ロック』(原題: The Boat That Rocked)は、2009年にイギリスにて製作されたヒューマン・コメディ。アメリカ公開時のタイトルは『Pirate Radio』。
・本作は、ブリティッシュ・ロックが全盛期を迎えた1966年のイギリスを舞台に、人々に熱狂的に支持された「海賊ラジオ局」のDJたちを描いた群像劇。
・監督・脚本は『ラブ・アクチュアリー』『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』のリチャード・カーティス。
・出演は、フィリップ・シーモア・ホフマン、ビル・ナイ、リス・エヴァンス、ニック・フロスト、ケネス・ブラナー。

②ウソのようなホントの背景
・本作で描かれる、公海上に停泊する船から、24時間音楽を流し続けるラジオ放送「海賊ラジオ局」は、1960年代の英国に実在したもの。
・当時の英国では、ブルースやロックがオンエアされるのは、BBC(英国国営放送)が週末に放送する二番組のみ。その他の番組ではクラシックやシニア向けポップスばかり。
・その状況を打破したのは、本作のモデルとなった「ラジオ・キャロライン」。同局が1964年3月にサフォーク州フェリックストウ沖で試験放送したのが「海賊ラジオ局」の始まり。
・同年5月には第2の海賊放送「ラジオ・アトランタ」が放送を開始。その後も放送局が次々に登場するなど、政府の規制や検閲を受けずに済む「海賊ラジオ局」の最盛期には、英国国民の4人に1人をリスナーとして獲得していたほどの影響力を保持。
・英国政府は、国内スポンサー企業への圧力をかけるも、結果としてナビスコやペプシなど外資系のスポンサー企業の登場を助長させることになり、「海賊ラジオ局」の資金源を断つことができず。
・英国政府は「BBCによる新しいFM放送局の設立」「海賊放送船が停泊する港への圧力」「公海上での取締りの上申(議会にて否決)」を進めるも、成果は得られず、最終的には1967年の新法「海洋犯罪法」により、公海上での海賊放送局の取締りを宣言。
・「海賊ラジオ局」のうち、唯一ラジオ・キャロラインが法廷闘争で政府に対抗するが、イギリス海軍の取締開始により、1968年3月には全ての「海賊ラジオ局」の放送は終了となる。
・なお、1967年に英国沖10kmの北海洋上ある放棄済要塞を領土として独立を宣言し、現在も存続する未公認国家「シーランド公国」は「海賊ラジオ局」の運営者だったパディ・ロイ・ベーツが「海洋犯罪法」に問われた際に当時イギリスの領海外に存在したこの要塞に目をつけ、不法占拠したことがルーツである。

③全60曲!作中を飾る名曲たち
(以下抜粋)
・All Day and All of the Night / The Kinks
・Hi Ho Silver Ling / Jeff Beck
・Yesterday Man / Chris Andrews
・Tell It Like It is / Aaron Neville
・All Over The World / Francoise Hardy
・To Sir With Love / Lulu
・Sunshine Superman / Donnovan
・The Happenings恋にご用心 /
The Supremes
・Jumpin' Jack Frash /
The Rolling Stones
・Fire ! / The Crazy World of the
Arthur Brown
・For Your Love / The Yardbirds
・Georgy Girl / The Seekers
・These Arms of Mine / Otis Redding
・Ooo Baby Baby /
Smokey Robinson and The Mirales
・This Old Heart of Mine
The Isley Brothers
・So Long Marianne
Leonard Cohen
・She'd Rather be with me
あの娘はアイドル / The Turtles
・I Feel Free / Cream
・Groovin / The Young Rascals
・Lazy Sunday / The Small Faces
・Elenore / The Turtles
・Stay With Me / Lorraine Ellison
・夕陽のガンマンのテーマ /
Ennio Morricone
・Sunny Afternoon / The Kinks
・My Generation / The Who
・You Don't Have To Say You Love Me
この胸のときめきを / Dusty Springfield
・The Wind Cries Many / Jimi Hendrix
・End of the World この世の果てまで /
Skeeter Davis
・Let's Spend The Night Together
夜をぶっとばせ / The Rolling Stones
・This Guy's In Love With You /
Herb Alpert and the Tijuana Brass
・Dancing in the Street /
Martha Reeves & The Vandellas
・I Can See For Miles 恋のマジック /
The Who
・A Whiter Shade of Pale 青い影 /
Procol Harum
・Won't Get Fooled Again 無法の世界 /
The Who
・Father and Sun 父と子 / Cat Stevens
・Wouldn't It Be Nice 素敵じゃないか /
The Beach Boys
・Let's Dance / David Bowie

④結び…本作の見処は?
◎: 作中を飾る名曲たちのBGMが本作の最大の聴きどころ。The KinksとThe Whoとともに、The Rolling Stonesの2曲が効果的なの使用されているのが、嬉しいかぎり。
○: 厳しすぎる規制に対し、性や服飾に開放的すぎる若者たち。「ラブ&ピース」「スウィンギング・ロンドン」の60年代を描いた映像資料としても価値がある作品。
○: リチャード・カーティスが過去に手掛けた『ラブ・アクチュアリー』『ノッティングヒルの恋人』の出演メンバーを中心とした、濃い系俳優の群像劇として見るのも面白い。『アメイジング・スパイダーマン』のリス・エヴァンスvs『カポーティ』のフィリップ・シーモア・ホフマンによる、No.1 DJを巡る小競り合いも楽しい。
▲: 青春映画としては、かなり薄味。
×: 権利関係なのだろうか…エンドロールの「ジャケット写真」登場を除き、作中にビートルズの使用楽曲がないことは、60年代のUKロックを語るためには致命的。
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