みてべいびー

マイ・ブルーベリー・ナイツのみてべいびーのレビュー・感想・評価

3.5
新宿駅の丸の内線の改札の中の大きな看板に、この映画の宣伝ポスターが貼ってあったのを未だに覚えてる。小学生ながら、この絵になるキスを見てすごく興味をそそられた。
王家衛のコケてしまったハリウッド進出作品と評されることが多いけど、何となくそうなってしまったのもわかる気がした。何が悪いわけでもないけど、決定的にいいものもない、ラストシーンのためにある90分間。
白人だから、黒人だから、キマる画があるのと同じように、アジア人だからこそ成立する画の美しさ、みたいなものって少なからずあるんだろうなぁと思った。なんだろ、じっとり蒸し暑い雨の香港で撮るからこそ出る王家衛作品の味を、アメリカで再現するってのはかなり厳しい話で、でもきっと王家衛ファンはそれを多少なりとも期待してしまうんだよな。彼の作風を知らずして観る人はどう思うんだろう。自分にはもう得られない視点だから気になる。お洒落だしいい言葉もあるけど、それ以上でも以下でもない、と思うのかな。こんなハリウッド感満載なのよりも、ひっそりインディーズで手持ちカメラで撮る方が彼らしくなってたのかな、とか。逆にこれを物語もセリフもほぼ変えず、香港でトニーレオンとマギーチャンで撮ってたとしたら、どんな作品になってたんだろう、とかね。いくら考えてもしょうがないことを延々と考えてしまう。
でもやっぱり警察官とお店のオーナーが出てくる感じは変わらなくて、ちょっと嬉しかった。スプレーがかかったガラスケース越しにNora Jonesが見えて、Jude Lawが拭くと同時に彼女がクリアに見えるショットがこの映画で一番好きだった。あとキスと同時にパイと絡まって溶け出すバニラアイスのclose-up 、エロい。
Nora Jonesも最初演技上手いのかよくわからなかったけど、観てるうちにしっくり来るようになった。Rachel Weiszの感情的な役をあんまり観ないから新鮮だった、香港版ならカリーナラウがやってそうだなぁとか。Rachel WeiszもNatalie Portmanも南部訛り?が聴き慣れなくて、個人的に違和感はあった。けどJude Lawのブリティッシュアクセントは、一生聴いてられるくらい耳に溶けて入ってきた笑。久しぶりに会った元恋人とあんな風に話せるなんて素敵だ。
あ、でも一つすごく気になったのは、カジノでカードしてる場面とかバーでのヤジが嘘っぽかったこと。本当ニュアンスの問題なんだけど、これ台本に書いてありますって感じではっきり発音しすぎというか、文として成立しすぎてる。一昔前の日本のミュージシャンのMVで、曲が始まる前の一連の流れでイケイケのアメリカ人が出てきて、そのミュージシャンにちょっかい出す時の不自然なセリフみたい笑。この例えわかる人いたら奇跡だ笑。
撮り方も色彩もこだわってるし、中身のない話だとは全然思わないけど、何かが足りなかった気がしてる。それが何なのかはわからないけど。なんか色々切ないなぁ、勝手に。でもすごく勉強になった、観てよかった。
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