もとまち

スパイクス・ギャングのもとまちのレビュー・感想・評価

スパイクス・ギャング(1974年製作の映画)
4.0
「もう戻れない」系青春ウェスタンの傑作。自由を求めて家を飛び出た青年三人組の前に現れる様々な人生の岐路。そのひとつひとつを着実に踏み外し、彼らが破滅へとズブズブ沈んでいく様は胸が苦しくなる。金ない→仕事ない→強盗するしかない...という風に、主人公たちが悪事に至るプロセスを簡潔に示してしまうフライシャーの優れた語り口。人間なんて追い詰められたらあっさりボーダーを超えてしまうもんである。銀行員のおじちゃんに銃を突きつけた時の「間」、彼らが目前の選択に戸惑う瞬間をサラッと描いてくる憎々しさ。今ならまだ取り返しがつくぞ!、とついつい画面に引き込まれてしまった。リー・マーヴィン演じる老ギャングも燻し銀の佇まいで、彼に出会ったら着いて行きたくなる気持ちもよく分かる。しかし、彼はカッコいい悪党などでは決して無く、所詮はただの極悪人である。平気で仲間を見捨て、一人で逃げ出し、そうしてずる賢く生き抜いてきた醜い老いぼれなのだ。「俺に何を望んだ?」...苦々しい現実を突きつけられ、父との抱擁を幻視しながら駅のホームで静かにくたばるゲイリー・グライムズに泣く。フライシャーは叙情的な演出も巧い。モノのように人が死んでいく銃撃戦の非情っぷりは相変わらずで、アメリカン・ニューシネマ的な無常感とフライシャーの親和性の高さを感じた。
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