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男と女と男のukigumo09のレビュー・感想・評価

男と女と男(1996年製作の映画)
3.6
1996年のリュカ・ベルヴォー監督作品。ベルギー出身の彼は18歳の頃、家を飛び出し役者を目指しヒッチハイクでパリに向かった。テレビドラマで頭角を現した彼が映画に出演するのは1981年のイヴ・ボワッセ監督『Allons z’enfanys』で、主役の一人を演じた。ヌーヴェルヴァーグ系のクロード・シャブロル監督『Poulet ou vinaigre(1984)』『ボヴァリー夫人(1992)』やジャック・リヴェット監督『嵐が丘(1986)』に主要キャストとして参加するようになり国際的な知名度も上がっていく。1993年には監督デビューを果たし、本作『男と女と男』は長編第2作である。その後2003年にはグルノーブルを舞台に同じ役者たちを使った3本の映画を一気に撮っており、この3部作でルイ・デリュック賞を獲得している。

パリで働く女性弁護士アリス(オルネラ・ムーティー)はニコラ(ジャン=ピエール・レオ)と暮らしている。ニコラの方は家で掃除をしたり食事をしたりと専業主夫をしており、いつもアリスの帰りを待っている。しかしアリスにはガスパール(アントワーヌ・シャピー)というスポーツカメラマンの愛人がいた。アリスは忙しい仕事の合間に逢瀬を重ねているのでいつもより帰りが遅いということが増え、次第にニコラは不安に感じ始める。ニコラは妻の事務所に電話を掛けたり勝手に裁判の傍聴に行ったりと、アリスを半分心配し半分疑っているようだ。そんな時2人の共通の友人であるジュリエット(トニー・マーシャル)がアリスとガスパールがキスしているのを目撃してしまう。ジュリエット自身が夫の浮気で精神が不安定気味でもあったので、彼女はニコラにアリスの浮気のことを伝える。ニコラは何があってもアリスを失いたくないので、作戦を考えている。彼は相手の正体を突き止めようとガスパールの大型バイクを自転車にエンジンを積んだようなモビレットで追いかける。馬力の違いは明らかですぐに見失ってしまう。次の機会に備えてバイク屋でエンジンやマフラーを改造してもらい、ガスパールのバイクについて行くことに成功する。ガスパールの家などが確認できたニコラはさらに大胆な作戦を慣行する。それは数日前に芸術橋から飛び降りて自殺を図ったジュリエットを見て思い立った作戦で、ガスパールの近くで川に飛び込んで救出してもらい、彼に接近するというものだった。実際ガスパールは助けてくれて、家で介抱してくれる。ニコラはピエールと偽名を使い、この妻の浮気相手がどんな男か探り始める。

この作品でもジャン=ピエール・レオの存在感は抜群だ。フランス映画によくある寝取られ夫(コキュ)物の作品ながら、男同士の友情が垣間見えるなど、王道路線を微妙に外す脚本が面白い。最後は3人の関係だけでなく、なぜニコラが専業主夫になったのかという謎まで明かされて妙に納得してしまう。最後に映るポスターの文言も深く、余韻を残すだろう。
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