このレビューはネタバレを含みます
兄貴は田舎のGSの跡取りという、その地域では勝ち組とされる立ち位置なのに、パッとしない人柄のせいでパッとしない人生を送っている。従業員に片思いしてたのに、弟に取られて連れ去られそうになって焦る。
その女は、数年ぶりに再会した恋人(弟)に惚れ直して、都会に連れて行ってもらいたい、と憧れを抱くが。。
という展開。
映画を観ているときは、弟は良いヤツなんだと思っていたけど、観終わってみるとすげえ悪いヤツ。自分勝手だし非道。
つり橋に駆け付けた時も「どうしたの?」から始まってるところが何気に怖い。全部みてたのにすっとぼけてんの。そこからずーっと「みてない」と言い続けて、最後にあれですわ。ほんと怖い。
途中、親世代も兄貴が東京に出て弁護士になり、弟がGSを継いだということが分かるあたりに、田舎コンプレックス=都会への憧れもテーマの一つなのだろうなと感じて楽しい。
(兄貴の「おじさんが苦手だ」という発言も田舎コンプレックスですものね)
つり橋で兄貴が「ちえちゃん、下を見たらだめだよ」と言って服を捕まれるあたりとか、女にしてみれば都会に行かせてくれない田舎のしがらみのような感じですよね。「触らないでよ!」が、異性としてキモいという気持ちと、束縛から逃れたい気持ちが反映されていてすごく良い描写だと思う。(橋のこっち側が田舎、向こう側が都会というメタファー)
そのつり橋について、「なんでつり橋に行ったのか」と兄貴に問う留置所の面会シーンも良い。「本当は高いところが怖くない」などと言って兄貴の本音がどこにあるのか分からないし、次のシーンが法廷での証言になるスピード感も良い。
このように、いろんなとらえ方ができるシーンが多くて面白い作品なので、最後の終わらせ方がお腹いっぱいで食傷気味になってしまったのが残念。
いつもなら。このシーンのあとどうなったのかな。。と感じるような自分の好みのラストだと思うけど、本作においてはお腹いっぱい。それ以前に考えを巡らせる要素が多すぎる。。
けど名作だと思います。また見よう。