ぺぷ

ラヂオの時間のぺぷのレビュー・感想・評価

ラヂオの時間(1997年製作の映画)
4.3
おもしろ〜と思える要素が多すぎる、これはすごい。120分ずっと笑えて、ハラハラが続いて、それでいてぐっと熱くなれるシーンもしっかりあって。

◯ハラハラ
それぞれのキャラクターの主張と思惑で二転三転する現場と、それをどう凌いでいくか。緊張感がありつつも次はどんなふうに解決するのか、その次は何が起こるのかワクワクしながら楽しめました。
◯コメディ
緊迫したシーンに不意打ちの力技ギャグを入れてきたり、随所に散りばめられたちょっとした遊び心がズルいなあ、と思いながら笑ってしまいます。
◯ぐっとくる
創作物を取り囲む人とその環境によって少しずつ変わっていく作品とやるせなさ、それに対して作者として、編集者として、プロデューサーとしてそれぞれの矜持を、主張をぶつけるシーンは胸が熱くなります。みんなそれぞれ理想とする落としどころが違うんだから難しい。

この作品の一番の妙は、それぞれの登場人物にピントが当てられなくても、いま何を考えて、どう動いているのか分かるところだと思います。もちろんシナリオの進行上、フォーカスされやすい人は何人かいるのだけれど、外れたピントの中でも表情や態度の分かるシーンや、同じ画角に一斉に登場人物を映すシーンが多い印象です。これほどまでに各々の違う表情が一度に映される画があるだろうか!それぞれの回想によってキャラクターに深みを持たせる群青劇ともまた違う、こんなにも短時間でキャラクターを魅力的に、かつ立ち位置を明確にすることが出来るのは感嘆の一言に尽きます。

三谷幸喜監督作、これまでめちゃめちゃ面白いな、と思ったものはなく、なんでこんなにこの人有名なんだろう、くらいに思っていたのですが、今作で大きく評価が変わりました。こんなにキレキレの作品を作れる人だったんだ。
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