ゆず

ヘアスプレーのゆずのレビュー・感想・評価

ヘアスプレー(2007年製作の映画)
4.5
雲間から見下ろす1962年のボルチモアの町並み。
ビートに合わせて投げ込まれた新聞には「黒人学生の入学拒否」の見出し。朝の街角には黒人の靴磨き。(時代背景と本作のテーマを示している)
とある家のベッドでは女の子が元気いっぱいに目覚め、「おはようボルチモア」と歌い上げながら学校に向かう。トラックのなんかすごいところに乗せてもらう。人生の春。

もうこの冒頭だけでかなり良いのに、ほんの少しのインターバルを挟んでさらに盛り上げてくるから凄い。
テレビの中で踊る同年代のスターたち。それを見てきっといつかあちら側に立ちたいと恋焦がれる少女たち。(ここでも、番組は白人がほぼ独占していることを示している)
そしてようやく出てくる女装トラボルタ!

開始から10分間、ずっとテンション高い状態が続いてちょっとどうかしている。これだけやられたら(ミュージカルが苦手で完全に心を閉ざした人以外は)みんな心を開かざるをえなくなるのでは?だって通りすがりの運転手までもが、トラックのあんなとこに乗せたりしてるし。
で、こんなテンション高くてハッピーな状態が断続的に続く。テーマは今に繋がる社会問題を扱っているのに、あまり暗くならない、重くならない。主人公のトレイシーは太っていてもめちゃくちゃ軽そう。彼女のスマイルがボルチモアを、世界をハッピーに変える。
全力で娯楽映画するとはこういうことを言うのかも。
ゆず

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