こたつむり

グミ・チョコレート・パインのこたつむりのレビュー・感想・評価

1.4
原作:大槻ケンヂ×監督:ケラリーノ
というナゴム繋がりの作品。しかもテーマソングは電気グルーヴ。うん。ここもナゴム繋がりでした。

原作が面白かったし、ケラリーノ監督の『美味しい殺し方』も面白かったし。と、割と期待に満ちて鑑賞に臨んだのですが。ふぅ。またまた同じミスを繰り返してしまったようです。期待し過ぎは映画を殺してしまうんですね。まあ、期待していなかったとしても。原作既読だと擁護できないんですけどね。

例えば、本作は80年代の青春映画なんですが、舞台が過去だと思えないんですよ。確かに80年代グッズは散見されるんですが、細かい気配りが足りないんです。例えば、学生服はブレザーで緑色だし、BOSSの自動販売機はあるし、主人公たちはズボンにシャツインしているけど他の人は出しているし。やっぱり、コテコテを狙うくらいじゃないと。中途半端なんですよね。

それと。原作で描いているのは、未来に不安を抱く少年少女の物語なのですが、映画では主人公が30代になったところから描き始めているんですね。もうね。これって本末転倒じゃないですかね。未来が分かってしまったら、何のキラキラもドキドキも無いですよね。

コメディだから適当で良いわけがなく。
低予算だから細部に無頓着が許されるわけもなく。というか、結構、豪華な出演陣ですよ。いぶし銀な人たちが揃っていますよ。彼らにお金を掛けるなら、もっと違うところに掛けるべきだと思いますよ。それとも、いっそのこと、全て現代劇に変換して予算削減を狙うか。うん。そのくらいの決断が欲しかったです。

その他にも、色々と原作から改変しているんですが…主人公たちが大人になった話は原作に存在しないし、主人公の両親のエピソードも存在しないし、主人公たちのバンドの役割も思いきり違うし、主人公とヒロインの関係性も違うし。って、そもそも、原作の持つテーマすらも再現できていないし。

僕は原作至上主義じゃないので、監督の解釈で自由に描けば良いと思っていますが。原作の良い部分を改変して、それが全て面白くないですからね。もう、ダメダメですよ。うん。それとも、わざとB級映画っぽく仕上げたのかな?。

というわけで、原作未読の人はどのような感想を抱くか解りませんが、原作既読者としてはお薦めできない作品でした。

というか、映画を観るんなら、それ以上の時間を掛けて原作を読むべきだと思います。特に十代の悩める男子諸君には強烈にお薦めします。グミ編のやるせなさ、チョコ編の不透明さ、そしてパイン編の熱さ。若い頃のドロドロとした白濁色の内面が真に迫ってくる傑作ですよ。大槻ケンヂ氏の独特の文体が苦手じゃなければ是非とも。

あ。女子は避けた方が良いと思います。
というかモテない中高生男子の生態が解っちゃうから読んじゃダメ!
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