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フェリーニの道化師のatsushiのレビュー・感想・評価

フェリーニの道化師(1970年製作の映画)
3.8
”サーカスは、私のこれまでの多くの映画に侵入してきたので、一本の映画がサーカスだけで占められてしまうことには必然性があった”

とフェリーニが述懐する通り、満を辞して作られたのが今作。テレビ用映画として企画された今作は、フェリーニ自身が引退した道化師たちにインタビューして周ると言うドキュメンタリーの体で話が進んでいく、一種のモキュメンタリー映画となっている。

作品内に登場するのは実在の道化師に留まらない。フランスの喜劇俳優で監督のピエール・エテックス、或いはチャップリンの実娘ヴィクトリア・チャップリンと言う風に、現代の喜劇にまで射程を広げているように思える。フェリーニにとってはサーカスの道化師も映画の喜劇も地続きなのだろう。フェリーニ作品に登場する自由奔放で時にクレイジーな登場人物たちも皆、その延長線上の存在なのかもしれない。

冒頭、少年が寝室からサーカスのテントを覗く挿話が示す通り。他の多くの作品同様、今作もまたフェリーニの自伝的映画と言える。フェリーニは言う。

”誰もがつくることのできる唯一のドキュメンタリーは、自分自身についてのドキュメンタリーである”

2024/04/11 1回目
【2024年121本目】
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