荒野の狼

新選組の荒野の狼のレビュー・感想・評価

新選組(1969年製作の映画)
3.0
1969年公開の122分のカラー映画。三船敏郎が主人公の新選組の局長・近藤勇を演じ、新選組のはじまりから終わりまで主な事件が織り込まれている。近藤は、人物として、よく描かれ過ぎではあるが、第三者的に映画を見れば、殺陣のシーンは非情で、ほとんどが汚い手を使った暗殺により、華麗な斬り合いの要素はなく、血しぶきがあがるなど、リアリティはあるが、後味が悪いものばかりで爽快ではない。新選組による拷問やだまし討ちのシーンもあるので極端に美化している映画ではない部分は評価できる。また近藤の実家の家族が登場する一方、別宅に妾を住まわせるなど金銭を使っており、こうした部分からも、近藤への感情移入はしにくい。
副長の土方歳三 は小林桂樹が演じており、劇中では、土方が隊律を厳しく守る憎まれ役になっており、そんな土方に近藤が謝るシーンがある。ところが、終始、硬派な土方を演じた小林のほうが、近藤と比較してブレがなく、最終的には魅力のある人物像となった。
映画の前半で、存在感をみせるのは芹沢鴨 を演じた三國連太郎。芹沢の墓は京都の壬生寺にあるが、その隣が本作でも描かれている暗殺のあった八木邸で、現在も当時の刀傷がみられる。映画の聖地巡礼として訪れるのもよいし、本作を現地を訪れる前に見ておくのもおススメ。
豪華スターの共演も見所。存在感があり、出演場面が比較的多いのは、沖田総司 : 北大路欣也、伊東甲子太郎 : 田村高廣、河合喜三郎 : 中村賀津雄、谷守部 : 中谷一郎、有馬勝太 : 中村錦之助となる。映画の最終盤に、近藤の同郷の若者のひとりとして古谷一行が数秒出演している。
山南敬助は中村梅之助が演じているが、本作の登場人物の中では数少ない曇りのない清廉な人物として描かれている。山南の切腹シーンが本作にあるが、実際、切腹した場所は京都の壬生寺に隣接する旧前川邸で保存されている。この部屋の一般公開はされていないが、前川邸のホームページで写真と説明が見ることができ、映画を見た人には感慨深い。前川邸には土方らが拷問を行った蔵が残されており、こちらの写真も前川邸ホームページで見ることができるが、陰惨な印象である。
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