クシーくん

新選組のクシーくんのレビュー・感想・評価

新選組(1969年製作の映画)
3.8
割りとど真ん中な正統派新選組映画だった。
清河八郎からの離反に伴う壬生浪士組結成から甲陽鎮撫隊壊滅と板橋の刑場に露と消えた近藤勇の最期まで、芹沢派暗殺、池田屋事件、河合耆三郎切腹、山南敬介脱走、油小路の変など要所要所の重要エピソードを上手く人間ドラマの中に織り込みつつも、本当に始まりから終わりまでをキッチリ2時間ちょいで収めている。
近藤を主役にしている映画って最近では滅多に作られてないみたいで逆に新鮮だった。そのせいか、近藤の愛人事情とか後半割りと興味ないどうでもいい展開まで広がったのが玉に瑕感ある。三船敏郎は49歳、流石に少し老けてきて、特に新選組結成前の多摩時代は理想に燃える若者には全然見えないのだが、剣戟は昔とった杵柄、鮮やかな動きはまるで衰えていない。

現在の二枚目なイメージからは程遠い小林桂樹が土方歳三を演じているのだが、これが意外なほどの好演で、土方にしか見えない。役者魂感じた。
沖田総司を演じる北大路欣也は今まで観た中で一番若い時代で、この頃26歳との事だが、声にドスが効いててもうベテランの風格漂わせている。何故かこの映画では沖田の最期だけめちゃくちゃ大胆な脚色を加えていて、ヤクザ映画みたいな死に様に思わず笑った。沖田=病弱な天才剣士のイメージはまだこの頃強くなかったのかな。
芹沢鴨を演じる三國連太郎がこれまためちゃくちゃハマり役。三谷幸喜の大河「新選組!」の薫陶を受けた身として、私の中で芹沢鴨といえば佐藤浩市だったのだが、父三國連太郎も従来のイメージに匹敵する名演技。詰め寄る近藤に思わず弱音を漏らす芹沢の寂しい姿が良い。

大作映画故の展開面での冗長さもややあるものの、ワイドスクリーンを活かした、奥行きの広い斬り合いシーンは迫力があって美しい。特に油小路の変におけるモンタージュカットを多用した暗中の決闘は時代劇中においても屈指の名シーンではないかと思う。
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