あなぐらむ

お祭り野郎 魚河岸の兄弟分のあなぐらむのレビュー・感想・評価

4.0
東映東京に移り、「トラック野郎」で文太の三の線を当てた鈴木則文が、シリーズの合間、興行の隙間に松方弘樹にお祭り大好きで女にモテモテな河岸の若者という劇画チックなキャラを当てた娯楽編。因みに東京卸売市場全面協力である。

鈴木則文は本作の10年位前に「任侠魚河岸の石松」があり、やり易い題材だったろう。アバンからサービス精神全開で、TVネタから政治ネタまで矢継ぎ早に小ネタや劇的要素が放り込まれ、観客にとにかく面白いものを見せてやろうという姿勢は楽しく小気味良い。
トラック野郎の二番煎じという評も見たが、美味いんなら何番でも煎じて出せば良いのだ。主要な客層を意識した兄妹の浪花節を中心に、恋愛模様から仲卸を陥れる陰謀まで軸を幾つか変えながら、上映時期にしては豪華な面子を、ほぼ均等に見せていくオールスター映画の趣である。

キャストは駄目男の弟分に小倉一郎、ヒロインの悲劇の踊り子に東てる美、その兄の流れ板に江守徹。松方のライバルに岩城滉一、準ヒロインは夏純子に渡辺やよい、更に料亭の若女将に志穂美の悦ちゃん!悪役は室やんの豪華版。ちゃきちゃきした芝居のぶつかりは則文映画の滋味。

悦ちゃんも美しいが(アクション無)、ストリップのオープンまで披露する脱ぎっぷりと、儚さが両立する東てる美が良い。夏純子にもう少し見せ場が欲しかったが渡辺やよい同様、贔屓女優を使い続け、綺麗な画は残して見せる鈴木則文の女優思いな姿勢が感じられる。
映画の質としては高くないのかもしれないが、鑑賞感は決して悪くない。