すずき

マッチ工場の少女のすずきのレビュー・感想・評価

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
3.5
マッチ工場で働くイリスは、恋に憧れているが相手はいない。
母と継父は過保護で束縛気味で、兄はそんな家を出て1人で暮らしている。
ある時、素敵な赤いドレスを買うが、親はそれを厳しく叱責する。
彼女はドレスを着て家を飛び出すが、そこでお金持ちの男性に声をかけられる。
イリスは誠実な恋愛のつもりだったが、男性は一夜の遊びで娼婦を買った、と認識しており…

アキ・カウリスマキの監督の労働三部作のラスト。
淡々と展開を進めるやり方は今まで通りだけど、前二作と比べて陰鬱な作品。
前作「真夜中の虹」も一般的な倫理観から外れていたが、今作は更にそれを飛び越える。
悲喜劇でも最後には希望らしきものが見えた前作と違って、今作はモロに悲劇の、誰も幸せにならないストーリーだった。
しかしそれだけに、分かりやすく楽しめた。

当時の暗い世相を映し出したニュース映像を作品に挟む所は、監督の最新作「枯れ葉」と共通している。

タイトルは「マッチ売りの少女」のもじりだろうけど、内容は高橋葉介の短編漫画「腸詰工場の少女」の方が近い。