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マッチ工場の少女のよく観るのネタバレレビュー・内容・結末

マッチ工場の少女(1990年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

少女の住む場所に悲劇は切実にやってきて、自由を奪っていく。

カウリスマキ監督の労働三部作。視聴2作品目にして、見方のコツが掴めてきた。構図がとにかくビタっと決まる。少ない音響と台詞で行間をしっかり読ませてくれるから、案外これくらいの情報量でも楽しめる。BGMが登場人物の心を代弁してくれるから、映画を音楽に合わせたのか、音楽を映画に合わせたのか分からなくなるくらいにマッチする。

主人公を女として見た近寄る男、自立した女として見てくれない両親、全てへの憎悪を破裂させて、華々しく散る様に心が痛む。
自由の象徴として、タバコとマッチが使われる。両親、男の嗜好品、また妊娠したから吸えないタバコ、お金を稼がなければならないから作るマッチ。自分の価値が高ぶったと思った矢先に男と両親に中絶を迫られ、堕した彼女は家出して縛り付けていた全てを失う。
兄の助けで居候が叶って窓際やベッドでタバコを吸うシーンは、まさに自由になった証。彼女を叩き付けた不自由への代償として、「すてき」と言って買った殺鼠剤を溶かして、殺しの水を作る。次々と関係者を殺めていく様はまさに猟奇殺人だが、逮捕される頃には心の準備が出来ていて、また不自由の檻へと収められる。なんとも救い難い悲劇である。