KnightsofOdessa

甘い生活のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

甘い生活(1959年製作の映画)
4.0
[人生は祭りだ…毎日が…祭りだ…] 80点

ネオリアリズモ期から急に方向転換して現代イタリアの上流階級の退廃を描いた大作。同じ年のカンヌ映画祭コンペには本作品とともにアントニオーニ『情事』が並び、その両方が主要賞に輝くことで、イタリア映画の新世代の台頭を世界的に示したわけだが、奇しくも両方とも通りに人の居ない不気味な街を描いていた。ハリウッドからスウェーデン人女優アニタ・エクバーグが到着した時に、タラップにピザを持ってくるバカバカしさが好き。イタリア人美女たちは掌で転がすのに、エクバーグには振り回されているのが井の中の蛙って感じで可愛い。ド深夜にマストロヤンニから電話を受けたアヌーク・エーメが"今?父親とトランプやってるの"と修学旅行でテンション上がった小学生みたいなことやってるとこが最高。私もアヌーク・エーメと夜通し大富豪やりたい。その後も華やかだが空っぽなエピソードが脈絡なく並べられていく。どこで何をしても空虚という感じは本作品の強化版とも言える『太陽はひとりぼっち』の方が荒涼としている気もするが、同作は誰も居ない孤独を、本作品は大人数に囲まれた孤独を感じるのでどっちもどっちか。八方塞がりの地獄としては3時間ある本作品に軍配が上がる。

毎日退屈な祭りをしながら既に死んでいるような人たちの話である。3年後同じ俳優に"人生は祭りだ!"とか言わせる人間の映画とは思えない。パオラちゃんが無限に可愛いラストでギリギリ持ち直すが、それでも観る順番を間違えてたら"大嘘やろ"と思っていたことだろう。
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