ハレンチ学園在学生

甘い生活のハレンチ学園在学生のレビュー・感想・評価

甘い生活(1959年製作の映画)
5.0
2010年の4Kデジタルリマスター版で鑑賞。初見時はVHSだったから画像の美しさは全くの別物である。のちNHKのテレビ放送でも見たので今回が3度目の鑑賞だが、冒頭のキリスト像をヘリで運搬するシーンとトレビの泉でのマストロヤンニとエクバーグの絡み、ラストの海岸のシーン以外ほとんど忘れていた。短いエピソードの積み重ねだが、全体を支配するのは虚無感。マスコミの報道という名の馬鹿騒ぎぶり(僻村で演出の「奇跡」が行われるシーンは公開当時問題にならなかったのだろうか)は公開から60年以上経っても変わらずじまいだ(登場人物のカメラマンの名前パパラッツォからパパラッチという語が生まれたのは有名)。才覚と男前で浮き名を流してきたマルチェッロも結局は文学者にもジャーナリストにもなれず中途半端に広告代理店業務を続け、腐れ縁で付き合っている女性とも別れられず、終わりのない日常を生きている様は、考えようによっては終わらない地獄巡りのようでぞっとする。唯一の救いのようにも見えたアヌーク・エメの金持ちの夫人も幻のような扱いで退場してしまった。退廃的という一語で語られることの多い作品だが、間違いなく現代人の孤独を嫌というほどフィルムに刻んでしまった傑作と言えるだろう。そういえばニコが出ていたことも覚えていなかった。