みかんぼうや

甘い生活のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

甘い生活(1959年製作の映画)
3.5
久々のフェリーニ作品。そして、カンヌパルムドール受賞作。美しく煌びやかなローマの建物や街並みを背景に、記者である主人公マルチェロとモデルや女優、実業家など様々なセレブとの接点を通して描かれる欲に真っ直ぐな人々の人間模様。

マルチェロはセレブの女性たちからもモテまくり、セレブたちはその栄華に溺れるかの如く、金銭的不自由も感じさせず自由奔放に遊び戯れる。そんなセレブたちを言葉巧みに口説き落とし、その世界に溶け込みつつも、内心は全て自分の手の内にあるかのように小馬鹿にすらしているように見えるマルチェロ。

本作で一番面白味を感じたのは、登場するセレブ達も、あらゆる女性からモテる人たらしで世渡り上手なマルチェロも、その場その場を最大限に楽しんでいるように見えて、全然幸せそうに見えないこと。パーティーをしたり大騒ぎして、確かにその場は楽しそうに見えるのに、何か満たされぬ幸福感に飢え、どこか不安を抱えているように感じる(実際に後半にそれを象徴するかのような事件も起きる)。

そんな画面上で表現される煌びやかでエネルギー溢れる世界から感じる、どこか鬱屈とした負のエネルギーこそ、本作の魅力なのかもしれません。本作のラストを飾る女性の存在は、このセレブたちと全く逆で、決して金持ちではないのに、とても爽やかで幸せそうに見える。なんとも皮肉めいた締め方。

ただ、3時間はさすがに長かった。話のテンポは良いし、ローマの街並みなど画力も十分で映像も芸術的なので、睡魔に襲われるようなことはなかったですが、分かりやすい一本の筋立ったストーリーがあるわけではないので、やや冗長に感じる部分がありました。マルチェロという主人公の人格やローマのセレブ達の人間模様を見せるために必要だった時間かもしれませんが、もう少しコンパクトでも良かったかな。

ちなみに、主人公マルチェロの相棒としてパパラッツォと呼ばれる男がいて、その迷惑記者っぷりから、パパラッチをもじってつけた面白い名前なのだろうなと思っていたら、なんと本作のこのキャラがパパラッチの語源だったそうな!観終わった後にこの事実を知って、ちょっと得した気分でした。
みかんぼうや

みかんぼうや