フランキー堺が歌って踊っている時点でもう優勝。ミュージカルという形式を通じて彼の身体性を存分に楽しむことができる。自由や個を称揚しがちな欧米のミュージカルにはない、スーツ姿のサラリーマンが大集合して日本型雇用の悲哀を歌う一斉ダンスシーンは和製ならでは。耳に残る音楽が浮くことなく見事に物語にフィットしており、ミュージカル映画としてちゃんとしてる。それにしても、1964年東京オリンピックを目前に浮き足だつ観光業界を舞台にしたこのミュージカルを、オリンピック開催はもはや絶望的な2020年コロナ渦の中の空いている映画館で観るなんてステキな皮肉である。「わたしはゼロになりたい!」