Jimmy

永すぎた春のJimmyのレビュー・感想・評価

永すぎた春(1957年製作の映画)
4.0
初見は映画館(阿佐ヶ谷ラピュタ)で2013年4月21日に鑑賞なので、7年ぶりに観た。
1957年の若尾文子&川口浩W主演のカラー作品であり、自分が生まれるだいぶ前の東京をカラー映像で見られるのが素晴らしい。

この映画、古書店の娘=百子(若尾文子)と会社重役の息子=郁雄(川口浩)の若いカップルが婚約するが、結婚は1年ちょっと先。結婚するまでは肉体関係を結ばないと決めてはみたものの、二人ともそれぞれが他の男や女から誘惑を受けながら葛藤しながら青春するという話。
1957年製作のカラー映画で、若尾文子が清楚な美しさを放っている。ファッションも、今見るとレトロ感あるが、素敵。

「戦争中も今も(戦後も)、焼け残った古本屋である」というナレーションとともに、俯瞰で古本屋が映されるがクレーン移動しながらカメラは下がってくる。その古本屋で働いている百子(若尾文子)。百子を目当てに本を売りに来る客もいるほど。
そこに電話がかかってきて百子が会いに行ったのが郁雄(川口浩)の大学。この大学は東大。
学生服姿の郁雄と百子が「1年ちょっと先の結婚だけど、肉体関係は結婚してから」という約束をする。
その直後、カップル二人がお互いの両親と会う場面があるが、双方の親同士が何を話して良いか詰まってしまい「沈黙の多い見合い現場」みたいな場面は、笑える。(映画館で観た時は観客みんなで大笑い)

百子と郁雄がデートする場面、百子が遅刻するが「あなたにベレー帽をかぶっているところを見せたくて遅れたの…。似合う?」と聞くと、郁雄は「た・べ・た・い・くらいだ…」という浮いたセリフ(笑)

また、百子は郁雄に「私たち、結婚式を挙げなくても結婚していいんだわ…」と懸命に言って、熱いキスを交わす。

その後、百子は郁雄の女好きの友人=高倉(川崎敬三)に言い寄られ、郁雄は高倉の個展にいた女=つた子(角梨枝子)に言い寄られ、と双方困った立場になる。
百子は、高倉に抱きつかれると火鉢の火を押し付けて逃げる。
郁雄は、つた子と肉体関係して別れるつもりだったが友人と百子の登場によって、危機を逃れる。

百子の兄=東一郎(船越英二)が、登場してきたときは「今のところ、何も迷惑かける男ではないが、何も他人のためになっている男ではない」とのナレーションあり、『今のところ』というあたりが気になっていたが、終盤、若いカップルのためになるあたりは「粋」である。
東一郎に好きな女性=看護婦(八潮悠子)ができるのだが、その母親に問題あり、若いカップルのために自分の愛をあきらめて、若い二人が結婚できるように計らってあげるあたりは、ホロッとくる。

郁雄が百子に「僕たちはこの一年で、だいぶ大人になったな」とキスする場面が左にパンすると、披露宴場面となる。

若い二人(若尾文子と川口浩)が、爽やかな青春物語を軽やかに演じた映画であった。
三島由紀夫原作、田中重雄監督作品。
爆笑できる場面もあり、なかなかの佳作。

なお、映画館では見られなかった予告編がDVD特典映像として収録されているが、本作の撮影風景や、撮影現場を原作者の三島由紀夫が訪れて歓談している場面、削除されたシーンなどあり、これはDVDで観直して良かったと思う。最初に映画館で観た時は、未ソフト化作品であったが、その後DVD発売された。
発売されたDVDは「オリジナルネガからテレシネしたデジタルニューマスター版」であるが、映画館で見られたフィルム飛びがDVDでも所々見られたので、オリジナルネガの長年の保管状態に起因することも確認できた。
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