革命家チェ・ゲバラが医学生時代に南米をバイクで縦断した旅行記。若者らしい瑞々しい感性と真摯に物事に向き合う純粋さが、そこかしこに溢れている。本人の日記が原作。ロバート・レッドフォードが製作総指揮している。
旅のバディはアルベルト、のちにキューバに医学校を創設する生化学者。映画の最後に本人が登場。
旅の途中で出会う人びとは、比較的裕福だった故郷のアルゼンチンと違い、苦渋の中にいた。出会いの中でゲバラは「医師として人のために生きたい」を超える思いが膨らんでいく。
イケメンのゲバラを演じるガエル・ガルシア・ベルナルのスイートな美形が、旅が進むにつれ、厳しい社会を知って引き締まり、決意を新たにする大人の顔に変わっていくのがいい。
ゲバラが旅で知ったことは、社会のほんの一部、氷山の一角でしかないが、非常に感性が鋭く、理想を描く純粋さから、現実の社会の問題をスポンジのように吸収していった。
優れた人だからだけでなく、若い時に旅をして、自分の目で社会を見る経験は大切だ。
ゲバラが「南米は地域に分かれているが本来は一つ」と語ったのは「(政治的に)団結しよう」の意味合いだが、多民族の南米を一つに捉えることは、私には今までにない視点で斬新だった。
変化の多いダイナミックな景色も楽しめた。
『フィツカラルド』の船や港町がそのまま登場して懐かしくなった。
総指揮したロバート・レッドフォードはリベラルなアメリカ人。ゲバラの原作は相当に政治的なメッセージが書かれていたと思われるが、うまく省かれ、人と成りに焦点が当たり、真面目な若者の青春の一頁として普遍的な作品に成っている。