ニャントラ

カシムザドリーム 〜チャンピオンになった少年兵〜のニャントラのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

少年兵だったカシム・オウマがボクサーとして開花し、チャンピオンとして祖国に凱旋する様子に密着したドキュメンタリー。
あまりにも過酷な少年時代。あんなにも酷い境遇だと、信仰心が強かろうがそうでもなかろうが、本当に神に祈るしかなかっただろうなと思う。し、自分が生き延びられたのは神の思し召しだと思わざるを得ないだろう。それくらい死ぬのが当たり前の世界で生きてきたんだろうなと思った。毎日どんな思いで過ごしていたのか……想像もつかない。自分には到底想像できない過酷さだと思う。「今は(過去のことを)許してもらえるように毎日神に祈っている」というオウマの言葉がつらかった。
帰国時も「殺されるかもしれない」とどこかで思いながら帰郷したんじゃないかと思う。軍部の人に「父親は?」と聞かれて「お前らに殺されたんだ」と言わないのは偉いなと思った。目の前の人が殺した訳ではないし、当事者もそうするしかなかったことをわかっているからだろうか。
アメリカ暮らしに慣れて、地元の貧しさを見て居た堪れなくなっている様子も辛かった。また帰れるのか?と泣く姿も。また帰れたのかな。除隊が認められたなら、いつでも帰れるようになっただろうか。
ウガンダでなぜ内戦が起きていたのか、詳しく調べてみようと思った。
往々にして、大きな悲しみのきっかけは小さな火種なんじゃないかと思う。自国でそれが起きた時、自分が影響を与えられる範囲にいたとしても、止められる自信がない。
北朝鮮のドキュメンタリーもそうだけど、世の中には癒えない傷を抱えて生きている人がたくさんいて、自分はあまりにも幸福に生きているんだなということを痛感する。彼らのことを不幸だと断じたい訳ではないけど、ふとした時に自分の罪や失ったものの大きさを振り返ってどうしようもなく打ちひしがれるようなことは、自分にはあまりない。このドキュメンタリーの中でも時々カシムが唐突に暗い顔をしている時があり、その恐怖を物語っていたと思う。底の見えない崖っぷちに立たされるような暗い不安がずっと胸の隅に巣食っているというのはとても恐ろしいことで、そんな思いをしていないだけで、自分はすごく幸せなんだろうなと思った。手放しに幸福と思える時間を大切にしたいと思う。
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