春とヒコーキ土岡哲朗

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人の春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

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大人の怖さが炸裂する。

シリウス登場の幽霊屋敷のシーンが緊張感がハジケていて面白い。ロンを助けにハリーとハーマイオニーが屋敷の部屋に入ると、ドアの裏に囚人・シリウスが。シリウスの汚い笑い顔や、まともな人ではない震え方で、タイトルにもなっている「アズカバンの囚人」が、出演シーンが少なくてもしっかり爪痕を残す。そして、ルーピン先生がシリウスの手を握って起き上がらせ、2人がグルだったと発覚するショックなシーン。そこにスネイプが来て、それまでスネイプはハリーたちに怖い一面しか見せてこなかった中で、頼もしく見えるのも面白い。そして、シリウスとルーピンは悪者ではなく、本当の敵はネズミに化けているピーター・ペティグリューだと言う。ロンのネズミが魔法を解かれ、小汚いおじさんになる。一作目からそばにいたロンのネズミが悪い人間だったショックとともに、シリウスとルーピンがハリーの味方に反転する。ハリーたちがほとんど何もできずに、大人たちだけでどんどん話が転がるシーン。大人に適わない怖さもあるし、今までハリー目線で見てきたがハリーたちが置いて行かれるパス回しに未知を感じてワクワクもする。

後処理タイムトラベルがクライマックス。悪との戦いで終わらずにそのあとピークがあるのが不思議な構成で面白い。暗い話が多かったが、最後はSFの楽しい要素。今回はロンが満身創痍のためハリーとハーマイオニーだけで。1作目以降は3人でクライマックスに行くのをお預け。暗い話が多かったが、最後は楽しいSF。その中でも最後の最後は、父親が助けてくれたと思っていたハリーが、さっき自分を助けたのは自分自身だったと知る。ハリーが強い魔法を使えた嬉しさと、死んだ父親とはやはり再会できない寂しさもある。