もち

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人のもちのレビュー・感想・評価

4.0
今作は鬱や恐怖心との対峙を描く。
序盤から強烈な存在感を示すディメンター。
人間から幸せな感情を奪い、絶望と憂鬱をもたらす吸魂鬼だが、著者のJKローリングの鬱の経験から生まれたものだという。

自分が最も恐れるものに姿を変えるマネ妖怪を退治するには、恐れるものを笑いに変える。
ディメンターをやっつけるには、心に一番幸せな記憶を思い浮かべ、それ以外は何も考えないようにして呪文を唱える。
光でディメンターが追い払われるシーンは心の靄が晴れていく様を思わせる。
ダンブルドア校長の冒頭の言葉が良い。
「暗闇の中でも幸せは見つけることができる。
明かりをともすことを忘れなければ」

また、今作にはシリーズの中でも名シーンと言われるシーンがある。
自分が盾となり、生徒を守るスネイプ先生のシーンだが、これは原作にはない。
撮影時にスネイプの過去を聞いていた、アラン・リックマンのアドリブによるものだという。
この咄嗟の行動により、のちに明かされるスネイプの想いに加え、咄嗟に生徒を守ろうとする教師としての素質と、セブルス・スネイプという人間の本質が伝わってくる。
私たちはこのシーンによって、スリザリン以外に意地悪だったスネイプの根底にある、善人の顔を知るのである。

これがなければスネイプは、ここまで愛されるキャラクターにはなっていなかったかもしれない。
名優アラン・リックマンの役への理解と解釈が、魅力溢れるスネイプを新たに生み出した。
素晴らしいシーンであり、これによりスコアを0.5プラスした。
もち

もち