April01

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人のApril01のレビュー・感想・評価

4.5
みんないい感じにヤングアダルトに成長し、本作の登場人物たちのメンタルとルックスのバランスが最高。
制服を少し崩して着こなしたり、ラフな私服も現代っ子ぽく青春ものの空気が漂う。
ウィーズリーの双子もミュージシャン風だし、ロンやマルフォイでさえかっこイイ。みんな素敵!
この時期にしかない若さの魅力に溢れ、エネルギーがみなぎっている感じ。
彼らのリアルな会話がマグルと同じ、すなわち観客と同じで身近に感じられる登場人物たちが生き生きしている。
溌剌としつつも悩んで暗くて色んなものが詰まった時期ということがよくわかる。

そういう生徒の陰陽と、ディメンターやシリウス・ブラックにまつわる陰を上手くブレンドしてホグワーツの不思議な魅力がさらにアップ。

引き続き音楽の使い方が良く、映像に躍動感と立体感が出ている。ホールでの合唱も映画独自だし、指揮している先生のコミカルさも相まって独特のいい雰囲気が醸し出されている。

これまでのどこかあり得ない架空のフラットな世界が、今作からいきなりぐっと臨場感たっぷりに現実感を帯びてリアルに迫ってくる。

デビッド・シューリス演じるルーピンの顛末は切なく、自分の出自から逃れられないサガを背負って生きなければならない諦めの中に悲しみと強さを感じる。
後ろ姿を見送るハリーとゆっくり歩く後ろ姿の終盤の場面は、なんという侘び寂び!
この場面は原作をとても大切にしたリスペクトを感じる。そしてここに描かれているものは児童向け文学の域を超えている。

エンドロールを忍びの地図で描くのは最高!美しいアート作品として完成している。

すでに最後まで知ってれば、ある場面でスネイプがノコノコこっそりとついてきて絡んでくるのも含めて全てが愛おしい!

ダンブルドア役の変更については、リーチャード・ハリスは完璧なダンブルドア像を演じてくれたと寂しく感謝の反面、嗄れ声による平板な語り口が感情を表現しきれていないという気もしていたので、マイケル・ガンボンのハリのある声は、より生き生きとした強い人物として存在感を増しプラスの変化となっている。

テンポ良く、原作の削るべきところを上手く削り無駄がなく、独自に加えている小さな部分も多い。

原作では、セドリック・ディゴリーとチョウ・チャンは本作からすでに登場。ブラックと忍びの地図作成の友人達についてはより詳細に説明されている。クルックスシャンクスの賢さ、お利口さんぶりも面白い。
April01

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