びこえもん

ハリー・ポッターとアズカバンの囚人のびこえもんのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

子供の頃に1, 2度観て以来久しぶりに見返しました。ハリー・ポッターのストーリーは映画も本も過去に一通り鑑賞しているので大体分かっているのですが、やはり英国映画界のスマブラと言ってもいいくらい豪華俳優陣が集結したシリーズですから、幼少期には気にもしていない俳優の演技や映像の撮り方などに着目して観ると非常に面白いです。

監督が1・2作目のクリス・コロンバス(『ホーム・アローン』等)からアルフォンソ・キュアロン(『ゼロ・グラビティ』『ROMA』等)に変わり、映像の見せ方がガラリと変化したように思います。暴れ柳が吹き飛ばす雪がカメラに激突するようなカット、吸魂鬼が通り過ぎる際に凍りついて朽ちていく草花の接写、満月に晒されたルーピンの瞳にクローズアップし、ゆっくりと引いて行きながら変貌の様を映す……など、ドッと観客側に踏み込んで攻めるような映像が印象的でした。

演技面で秀逸なのはやはり何といってもスネイプが人狼化したルーピンを前にするシーンのアラン・リックマンでしょう。シリーズのオチまで知っていると重みが感じられます。演出面ではこういう遠大な伏線だけでなく、序盤で汽車に乗り込むロンの手元のスキャバーズを意味深なタイミングでアップにするところとか、ルーピンを前にしたまね妖怪が満月に変身するとか、上手いこと匂わせて後の展開に繋げていくところが要所要所にあり面白かったです。

これは映画というより原作からの問題ですがハーマイオニーの逆転時計はこの『アズカバンの囚人』では巧妙なタイムリープ展開をもたらす画期的かつインパクト大なアイテムである一方、それがアリになったらこの先全部それ使っていけば全部解決してしまわないか? という、ちょっとした御都合主義によって盛大にツッコミ所を作ってしまう安易な舞台装置だったかな〜という気がします。
時間移動を世界観に一度組み込んでしまうと、「それができるのに何でやらないの?」が常に付き纏ってしまうので、時間移動がメインテーマの作品以外でやるのは結構リスキーですよね。まぁ原作では、なんのかのと使えない理由を作っていたようですが……。