ぽち

首都消失のぽちのレビュー・感想・評価

首都消失(1987年製作の映画)
2.1
原作は小松左京お得意のIF物でそれが今作では首都という設定。新聞に一年間連載されたもので、本当は雲が無くなった後をメインしたかったようだが、連載期間の都合で雲消失までになったそうだ。

首都が無くなる事により日本や世界がどう動くかのシミュレーションがメインテーマの小説だが、映画は人間ドラマを中心としSF色やシミュレーションは味付け程度となっている。

結果としてどうでもいいロマンスとか家族愛と言うミニマムな世界観になって冗長な作品となってしまった。

ただのTVマン田宮の「次は俺だ」と言って勝手に特殊車両で突っ込むのは爆笑。挿入歌が背筋が凍るぐらい寒い。
そしてなんと言っても一番の見せ場である「雲」の描写がまったくSFマインドを感じない。中に入っていってもただ煙たいだけの描写。

唯一感心したのは、こんな未曾有の災害中にもお祭り騒ぎをして、昼休みにバレーボールに興じる人々を出したところかな。
実際こうなりそうだ。

後半はまったく小説と異なる大胆な変更を加えているが、それならいっそ雲の外ではなく中のサバイバルを描いた方が映画的には数倍面白くなりそう。
絶望した暴徒が作り出すヒャッハーなデストピアで「あべし!」って映画になりそうだ。

余談。
小説だと雲は未知の宇宙文明によって送り込まれた自動的観測装置ではないかと推測されている。ここら辺が本当はSF魂を感じるところなのだが、映画ではスルーしてしまっている。

で、実は小説の当初の構想だと雲が晴れるまでが前半で、後半は生還した東京の人々の知能が異常に向上しており、彼らの処遇を巡って国際世論が紛糾する、ってものだったようだ。

これ、すごく面白い内容になりそうだったのに残念!
「メトセラの子ら」みたいに、世間から隠れ優れた種族として暗躍していく・・・・・なんて感じかな。

誰か小松左京の遺志をついで書いてくれないかなぁ。
ぽち

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