ハマジン

アモーレのハマジンのレビュー・感想・評価

アモーレ(1948年製作の映画)
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「人間の声」
原作ジャン・コクトー(フランシス・プーランク作曲で『声』という1人オペラにもなっている)。室内に配置されたいくつもの鏡の中にアンナ・マニャーニを閉じ込める冒頭のパン・ショットから最後のカットにいたるまで、緊張感がまったく途切れない密室電話劇。洗面台の鏡を覗き込むマニャーニの顔のクロースアップが、鏡像か実像か判別不能になる効果を挙げているのが凄まじい。室内に侵入しマニャーニの睡眠を妨げる音の暴力性も忘れがたく、特に赤ん坊の泣き声の禍々しさが半端じゃなかった。

「奇跡」
「"神の子を懐胎した"と勘違いした愚かな女の彷徨」というアイロニカルな解釈も許容する脚本をねじふせるように、アンナ・マニャーニにひたすら階段を登らせるアクションの連鎖によって、崇高な「奇跡」以外の何者でもない領域へと映画が文字通り「上昇する」演出の力技にひたすら泣いた。花咲く木の枝にとまる鳥と見上げるマニャーニとの切り返しに、『神の道化師フランチェスコ』を思い出し。同時に彼女自身の罪の行為(かごの中の林檎を盗んで食べる)も容赦なく描く徹底ぶり。傑作。
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