スギノイチ

さらば、わが友 実録大物死刑囚たちのスギノイチのレビュー・感想・評価

3.0
中島貞夫は社会的敗者や犯罪者に肩入れする傾向が強いが、本作もその特性が発揮されている。
登場する囚人達は、死刑になるだけあって全員洒落にならないレベルの凶悪犯罪者なのだが、劇中において被害者の存在は意図的にオミットされている。
永島敏行の物語なんて思わず感動しそうになるが、こいつでさえ罪も無い一家を強姦・殺人しているのだ。
だが、中島貞夫特有の泥臭い演出でついつい感情移入してしまうのも事実。俳優陣の熱演も大きい。

磯部勉演じるインテリ犯罪者はかなりハマり役で、凶暴さの中にも聡明さが見え、単なるキチガイ犯罪者にはならない上手さがある。
石田純一や高橋昌也は獄中で新たな楽しみを見つけ、凶悪犯罪者とは思えぬ素朴さを発揮している。
何より、死刑台に向かう永島敏行に向ける愛川欣也の「元気でやれよおー!」が良すぎる。
犯罪者美化といえば確かにそうだが、『脱獄広島殺人囚』でも描かれたような人間のしぶといエネルギーを描く事に関して、この映画はかなり成熟しているように思う。
スギノイチ

スギノイチ