しゅん

女のみづうみのしゅんのレビュー・感想・評価

女のみづうみ(1966年製作の映画)
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虚空に手が浮かび、やがてそれが男女の常時であることが移動するキャメラのワンカットであることを理解する。そこから物語はヌード写真のネガを盗まれた脅迫の主題と、誰が本当に私を愛しているのか/誰を本当に私は愛しているのかという疑惑の主題によって推進していく。

枠や廃墟を伴う構図の決まり方は、窃視をする/されるの関係性の強調と連動して、映画を撮る/撮られるの関係とも絡まっていく。60年代の日本映画から度々感じてきた観念的な感じもあるのだが、しかし砂浜の坂で三人の男女がもつれつつ動く固定ロングショットや、放水する水を縫うように歩いていく岡田茉莉子の姿をみていると、見ること/見られることの歓びを寿いでいるように思える。川端康成原作の観念的な通俗劇は、それ故にどこか馬鹿らしく爽やかな気配を残して、列車がトンネルに入ったところで等々に終わる。

戦後の小津の人工性を、別の形に置き換えているように見えた。時代的にも主題的にも近い『砂の女』とは似て非なるものに思える。

シンメトリーに四回カットを割られる岡田茉莉子の撮り方には思わず笑ってしまった。
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