イチロヲ

女のみづうみのイチロヲのレビュー・感想・評価

女のみづうみ(1966年製作の映画)
3.5
不倫相手との逢引に溺れている有閑夫人(岡田茉莉子)が、尾行してくる奇妙な男(露口茂)に証拠を握られてしまう。川端康成「みづうみ」を原作に取っている、エロティック・ドラマ。筆者は原作を読了済み。

「虚構の女を追いかけてしまう男」と「被窃視に刺激を求めてしまう女」が付かず離れずの人間模様を展開していく。原作とは大きく異なった脚色が施されているが、主要人物の精神性は引き継がれている。

他者に裸を見せる仕事に就いている女性をクロースアップさせることにより、「肉体と精神の乖離現象」を表現していく。根源的なモチーフが採用されており、最盛期に入ったピンク映画を牽制するような雰囲気すら漂っている。

終始ダウナーな雰囲気に支配されており、気持ちが落ち込んでしまいがちだが、当時の情景が映像に収められているため、資料的価値を感受しながら鑑賞することができる。岡田茉莉子が、良い意味で異物感を醸し出しているところも必見。
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