シンタロー

ゼロの焦点のシンタローのレビュー・感想・評価

ゼロの焦点(1961年製作の映画)
3.8
野村芳太郎監督×松本清張原作によるサスペンス。脚本は橋本忍&山田洋次の「砂の器」タッグ。禎子は広告会社に勤める鵜原憲一と結婚する。金沢へ仕事の引継ぎに出かけた憲一は予定を過ぎても戻らず、消息不明となる。憲一の後任・本多の協力を得て、金沢で憲一の行方を調べる禎子。その矢先、憲一の兄・宗太郎が金沢で殺される。そして、禎子は夫の隠された過去を知る事となる…。
何度もリメイクされている名作ですが、クライマックス=断崖絶壁の元祖とも言える本作。北陸の暗い空、陰鬱な雪景色、荒々しい日本海が圧巻。モノクロ映像がさらに引き立たせる。戦後の日本が抱えていた暗部…そうでもして生き伸びなければならなかった壮絶…この時代に生きた女達の宿命に泣けました。芥川也寸志の壮大な音楽がさらに盛り上げる。演出もスピード感があって素晴らしい。これも祖父母と何回も観た想い出深い作品です。
ヒロインの女性3人がそれぞれの個性を発揮していて見事。久我美子は、祖父が男みたいな顔だと言ってて…自分もそんな感じしてたんですけど、改めて観るとそんなことなかったですね。犬童一心のリメイク版はこの禎子役の女優が酷かったので、久我はナレーションも含め、力強い演技に説得力がある。高千穂ひづるのファムファタールぶりが圧巻。「砂の器」でも大きな核となる"人間の過去"と、それを隠したいという葛藤。高千穂はクールな美貌の中に、孤独さや惨めさを表現されていて素晴らしい。和装と乱れ髪がイイ。有馬稲子が素敵なのは毎度ですが、本作では薄幸ぶりとヤサグレ感が凄い。少ない登場シーンでこの存在感。おかしな英語は妙にツボ。高千穂との後半の芝居、見応えありました。有馬と西村晃の死に様がまた最高。いい表情してます。
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