真鍋新一

紅顔の密使の真鍋新一のレビュー・感想・評価

紅顔の密使(1959年製作の映画)
3.7
Twitterの旧作邦画オタクのアカウントが激賞していたので、U-NEXTに入った記念にとりあえず再生してみたら、オープニングクレジットが終わるや否やいきなり最高潮の「ここまでのあらすじVTR」(無論なにかの続編などではない)。ロングショット、画面の遠くに馬で爆走する大量のエキストラ…日本映画黄金期の時代劇の豪華すぎる当たり前。馬に乗る人物の肩から上でロックした構図のショットが妙にスピード感があり現代的。iPhoneで撮った固定カメラのようなルックで驚かされる。

蝦夷の設定がやたら自由でファンタジー色が強く、衣装の奇抜さも含めてそれがまたスペースオペラのよう。こりゃ確かにいま見たほうがビックリする映画だ。

メインヒロインは東映時代劇では珍しいおぼこいお姫様キャラで、最初は初々しすぎて心配になるがだんだん風格が出てくる。サブヒロインは蝦夷側の敵女幹部(と書くとスーパー戦隊みたいだが、同じ東映なのでルーツみたいなものだろう)でキリッとした佇まいが素晴らしい。どちらも活動期間が短く、映画界が育てきれなかったスターだ。

おそらくは少年少女向けの冒険ロマンとしてそれ以上の楽しまれ方はされてこなかった。この手の娯楽時代劇は作品数が多いので出来不出来の差もあるだろう。すべてを観るに時間がかかり、まだ再評価されるべき作品が拾われているとは言えない。大川橋蔵の主演作にはまだまだ埋もれている傑作があると思う。
真鍋新一

真鍋新一