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ソウ ザ・ファイナル 3Dのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ソウ ザ・ファイナル 3D(2010年製作の映画)
3.5
 ノコギリで切断した右脚、老朽化したバスルームに監禁された外科医ローレンス・ゴードン(ケイリー・エルウィス)は痛みに耐えながら隣の部屋まで這いずりながら、血が流れる患部を沸騰した鉄の上に押し当てる。白昼、人々は集まり、ショー・ウィンドウの中で繰り広げられる光景を固唾を呑んで見守っていた。ブラッドとライアンがくくりつけられたのは回転力のあるチェーンソーの真横、そして上に括り付けられているのは彼らを二股するディナだった。悪の三角形から脱落するのは誰かというジグソウに似せた2代目の声、血しぶきと陰惨な結末。FBIにも警察にも一切の言葉を発しないジョンの元妻であるジル・タック(ベッツィ・ラッセル)からのリクエストに、ジグソウ事件を担当する内部調査官のマット・ギブソン(チャド・ドネラ)は事件の真相を尋ねる。一方その頃、ジグソウによる絶体絶命のゲームで何とか命を取り留めた数少ない生還者たちは、心に深い傷を負ったままその後の人生も苦しんでいた。そんな時、自身も死のゲームを奇跡的に生き残った男、ボビー・デイゲン(ショーン・パトリック・フラナリー)が現われ、現代のイコンとしてマスメディアを賑わす。彼のもとには救済を求める生還者たちが集って来ていたが、ただ1人ローレンス・ゴードンだけはプロモーション用DVDに収録される映像のシューティングを快く思っていなかった。

 2004年から記録的ヒットを続けた『SAW』シリーズの7作目にして完結編。前作のラストの処刑シーンから辛くも逃げ切った2代目ジグソウと初代のジグソウの最後の肉親との間で繰り広げられる「殺人」と「更生」という意思と尊厳の攻防と駆け引き。ファイナルに相応しく、ここにはかつて処刑された人間たちの断末魔の叫びが再びこだまする。ジグソウの引き起こすゲームがこの世に浸透すればするほど、メタ的に引いた視点で見る一般人が出て来る構図はウェス・クレイヴンの『スクリーム』シリーズと同工異曲の様相を呈す。伝説を餌に食おうとした輩はやはり、生前のジグソウに目をつけられ、処刑ゲームのターゲットになる。制限時間60分、人質は最愛の妻と自身を下支えしたスタッフというのは前作のアンブレラ保険会社の副社長ウィリアム・イーストン(ピーター・アウターブリッジ)と同じ明確な流れを汲むのだが、ウィリアムとは違い、今回のボビーのミッションはことごとく失敗する。ボビーのラスト・ミニッツ・レスキューと今は亡きジグソウのラスト・ミニッツ・レスキューへの天国からの想いとを交互に描きながら、心底狂人じみた2代目の奇行を明らかにするのだが、それにしても5,6,ファイナルと3作をもってしても彼の奇行を防げなかったアメリカの警察機構の無能っぷりは例に及ばず、当初の崇高な更生の裁きすらも横へ置いた理不尽な処刑の数々にはシリーズ末期の限界も滲む。冒頭の場面から類推すると最後の黒幕の登場はやや安易にも思えるが、6年7作に及んだ人気シリーズの大団円に相応しい衝撃のクライマックスである。
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