湯っ子

肉弾の湯っ子のレビュー・感想・評価

肉弾(1968年製作の映画)
5.0
戦争を描く。それは、人間を描くことと同じじゃないだろうか。
この映画には戦争の全て、そして人間の全てが描かれてると思った。動物には縄張り争いや、餌や牝の取り合いはあるだろうけど、戦争をするのは人間だけ。
戦争の恐ろしさ、悲しさ、愚かさ、滑稽さをあますところなく描きながらも、そこにいた人間たちを否定することは決してない。「ユーモアとペーソス」とは、まさにこの作品のためにあるような言葉だと思う。

初っ端からキレが良く、そのテンポがずっと保たれるが、終盤、海に浮かんで敵を待つシーンだけはゆっくりと時間が流れる。観客にも「待つ」ことを体感させるためなんだろう。
音楽は単純なメロディの曲を、さまざまなアレンジで使っているのが、効果的ですっきりしていて良かった。音楽映画じゃない限りは、映画音楽ってみんなこの手法でいいんじゃないかと思ってしまう。

笠智衆演じる古本屋主人、雨の中絡んでくる年嵩の兵隊とその家族、両親を亡くして身を寄せ合う兄弟、浜辺で自殺しようとするおばさん。威勢の良い3人娘も、主人公の恋したおさげの君も、若い女は哀しいうさぎ。
笑っていたと思えば泣かされて、ほっとしたと思えばはっとさせられる。白骨の叫びが忘れられない。すごいものを観た。
湯っ子

湯っ子