虚しい。ただただ虚しい。
大切な人たちは死に明らかに正しいこともねじ曲げられ、理想抱き死ぬことすら出来ない。
その中でも生物や風景はただ、いつものようにそこに佇むが、人間は醜く争っている。
ハエや小魚などの生き物がわざとクローズアップで映されることで、饒舌に物語る。
顔のクローズアップの多い映画で、「人の生々しさ」を感じた。
節々に見られたよく分からない精神論への主人公の反論は、岡本喜八さん自身が当時、ありたかった自分の表れ?なのではないだろうかと思った。
「なぜ、弟を思って、工場を抜け出した兄が殴られなければならないのか」
「なぜ、軍人は雨の日に傘をさしてはいけないのか」
「なぜ、たんまり貯めてある食糧を餓死しそうになっても食べてはいけないのか」
次々に描かれる不条理に、主人公は立ち向かっていくが、ことごとく報われない
愛する人も死んでしまった。
仇を討つことも叶わなかった。
生きて内地にも帰れなかった。
それを彩るとかく明るいBGMが印象的。
シュールリアリズム。
安部公房のようである。
これが戦争か。
ラストシーンの20年経った昭和の風景に
鳥肌が立った。
たった20年で世間はこうまで変わってしまうのか。
理想に準じ、国に準じ、戦っていた人々は、青春や娯楽を謳歌する。
戦中派が描く、戦争映画に嘘も虚栄もない。
もう二度とこんな戦争映画は作れないだろう。もう一度、世界中と戦争をしない限りは。