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肉弾のTSのレビュー・感想・評価

肉弾(1968年製作の映画)
3.8
【魚雷と化す前の青春】80点
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監督:岡本喜八
製作国:日本
ジャンル:戦争
収録時間:116分
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戦争映画でテーマはかなりシビアなのに、岡本喜八の味がでているためどこかコミカルであり狂気的。いわゆる人間魚雷となり敵船に特攻していく21歳の軍人の話。故に「肉弾」。彼の名前は作中明らかにならず、「あいつ」と呼ばれます。命を捨てる一日前に彼はどんな行動をとったのか。彼の苦い青春の一日を追った作品であります。

神風特攻隊も然り、当時の日本では敵軍に命を賭しても突撃していくという風潮がありました。いわゆる天皇崇拝であり、アメリカをはじめとした各国は日本のこれを最も恐れたのです。兵力や兵器ではない。倒しても倒しても折れない忠誠心に恐れを抱いたのです。どうやって魚雷を突っ込むんだと疑問を持ちましたが、「あいつ」はその一日前に様々な人に会っていきます。が、これまた奇妙。たまたま会う女性との会話も演劇的ですし、砂浜のシーンも奇怪。あんな小さいドラム缶で太平洋を漂流していますが大丈夫なのかといらぬ心配もしてしまいます。

そしてラストもなかなか印象的。結局、「あいつ」の人生とは何だったのか。戦争の理不尽さを民間レベルの目線から捉えた、奇妙ですがどことなく心に刺さる作品だと感じました。泣ける話でもないし、かといって笑える話でもない。不思議な映画でした。
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