青山

タンポポの青山のレビュー・感想・評価

タンポポ(1985年製作の映画)
3.9

シングルマザーのタンポポが営むラーメン屋を通りすがりで訪れたトラック野郎のゴローとガン。ゴローはタンポポに惚れてしまい、彼女の不味くて不人気なラーメン屋を立て直すため奮闘する......。


黒沢清の『ドレミファ娘〜』に出てるのは観たけど監督作は観たことなかった伊丹十三。
いやー、凄えっすわ。なんか、全然わけわからんのにめちゃ面白かった!

なんせ、本筋(?)は上記のあらすじの通り中年の男女が地域一番のラーメン屋を目指すスポ根モノなんですが、その合間合間で(たぶん全体の30%くらいは)全然関係ないショートコントみたいなのがガンガン挟まれてきて、しかもなんならそっちのが面白いというヘンテコなギャグ映画なんすね。

冒頭から役所広司(って言われても納得いかないくらい若くて、キャスト見るまで全然気付かなかった)が映画館のマナーを暴力的に説くR15版映画泥棒みたいなシークエンスから始まるメタさに笑っちゃった。この役所広司が何者か分からないんだけどなんかちょいちょい出てきて毎回良いもん喰いながらエロいことしてるのが印象的で、生きることは食事とセックスだ!みたいなシンプルで力強いメッセージを感じます(?)。あと、役所広司の最後のシーンは本作でも1番大爆笑させていただきました。わさび醤油は反則......。
他にもスーパーの潰し魔の話とか、妻危篤の話とか、スパゲッティの食べ方講座とか、関係ないショートコントのパートで好きな場面がありすぎる!

それに比べるともはや本編がオマケにすら感じられてしまいますが、カウボーイハットかぶってなぜかウェスタン風の主人公が一介のトラックの運ちゃんのクセにラーメン道極めてる感じでヒロインに指導するめちゃくちゃさが面白い(主人公が風呂でもカウボーイハットかぶり続けてるのも面白い)。
途中からは仲間も増えていくんだけど、そうして加わるセンセーやショーヘイやピスケンのキャラも良くって、テキサスならぬ東京の5人の仲間がずらっと並ぶシーンはなんかグッと来ます。ラストもとても西部劇チックで、いわばマカロニならぬラーメンウェスタンといった雰囲気。
はちゃめちゃでわけわからん映画なのに最後がなんかいい感じだから「いい話だったなー」と錯覚しそうになるのがずるいっすね。

しかし個人的にこういうシュールでナンセンスなコメディ大好きなので堪能しました。マルサとかお葬式も観てみるかー!
青山

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