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サンゲリアのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

サンゲリア(1979年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

NYにヨットの漂流船が流れ着き、警官が船の中のゾンビに襲われる。その船主の娘アンがカリブ海の孤島で消息不明の父親を記者とバカンス中のカップルの船で捜しに行く。島では謎の奇病が流行り、死者が蘇り、生者を襲っては食らう地獄と化していた。命からがら島を脱出した一行が見たのはゾンビだらけと化したNYだった…。

お話は至ってシンプル。
下手するとジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」以上に愛されているかもしれない?ゾンビ映画。
気合いの入った特殊メイクと無謀な撮影に感心するホラー映画の秀作。

子どもの頃に初めて見たゾンビ映画だが、内容をほぼ覚えていた。
それだけ子ども心にトラウマで、衝撃的だったのだろう。
見どころは何と言ってもゾンビのメイク。
顔色が悪いだけのゾンビが多いロメロ監督の「ゾンビ」と違い、ほとんどのゾンビがどこかしら腐っている。
墓場から立ち上がるゾンビの眼に大量のウジやミミズがうごめく姿は、今見てもインパクト大。
当時のエキストラの根性が伺える。
きっとその後のゾンビ映画に多大な影響を与えたことだろう。

今も語り草となっているのが、前半の見せ場であるゾンビ対サメのシーン。
航海の途中、海中を撮影したいというカップルはサンゴ礁の海に潜る。
トップレスで潜る女性のお色気シーンかと思いきや、突然サメが現れて大慌てすると同時に、海の中からゾンビが出現。
なるほどゾンビは死んでいるから、水中でも平気だとは今見ても斬新な汎用性。
CGのない時代に本物のサメを使って、腕を食いちぎられても、ゾンビはサメにしがみつき、逆にサメに食いつく。
この無謀で危険な撮影が凄い。
数あるゾンビ映画で水中での撮影なんて他にないのでは?

サメとゾンビが格闘している間に、カップルは船に戻り、再び一行は島を目指す。
島に着くとメナード医師が働く診療所には、奇病に犯された島民が次々運ばれる大変な状況。
そして死んだ島民はブードゥーの呪いによって蘇えり、起き上がった所を頭を撃ちぬいて射殺される。
島にやってきた4人は、迎え入れたメナード医師にアンの父親は奇病に冒され死んだことを知らされる。

次第に蘇えったゾンビが診療所に迫る。
島から出たがっていたメナード医師の妻はシャワーから出たところをゾンビに襲われ、目を串刺しにされ殺されてしまう。
あまりに痛そうなこのシーンはTVCMにも使用され、当時もの凄く話題になった。
昭和の時代は何と大らかなことか。

火炎瓶で診療所に集まったゾンビを焼き払った一行は、島を脱出。
もちろん火のついたゾンビはノロノロと動く。スタントマンの根性も凄い。

ようやく帰れると思った矢先、ラジオでNYもゾンビが大量発生していることを知る。
最初に襲われた警官がゾンビとなり、アメリカ本土への火付け役になった訳だが、橋を渡りNYへ向かう大量のゾンビのラストカットは、これから更なる惨劇を暗示させるバッドエンドだ。
これから安住の地を探すより、平穏な日々が壊される方がよほど怖い。

監督はイタリアンホラーの巨匠ルチオ・フルチ。
日本での劇場公開作は本作ぐらい?だが、ストーリーは破綻していても、こだわり抜いた残酷描写は、いまだホラー映画ファンに人気で、96年に他界した後も、旧作が続々リマスターされている。

舞台となる島内では、どこからかブードゥー教徒が叩く楽器の音が聞こえてくるが、それがゾンビを鎮めようとする祈りか?、生み出している呪術か?
ゾンビ発生の原因が明らかにされないのが残念だが、その謎が現実の新種ウィルスの発生直後にも似て、味わい深い。

その後のゾンビ映画の特殊メイクの手本となったことは、まず間違いない。
南国の暑さで腐りゆくゾンビ。
その腐敗臭が伝わってくるような作品である。
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