シャチ状球体

サンゲリアのシャチ状球体のレビュー・感想・評価

サンゲリア(1979年製作の映画)
3.0
フルチの代表作なのにどこにも配信されてなかったので、『幻想殺人』と一緒にブルーレイを購入。こういうのを無駄遣いと言います。

まず、他のフルチ映画と比べて思ったのは、お金のかかった街ロケがサンゲリア以前の作品にしかないこと。『女の秘めごと』にも高所から街並みを映した大胆なショットがあったけど、この映画にも序盤から船の上でゾンビに襲われる結構豪華なシーンが出てくる。
『地獄の門』以降の作品は室内の限られたシチュエーションしか出てこない(例えば、1981年公開の『ビヨンド』ではたまに喫茶店やドライブのシーンが挟まれるけど、1985年公開の『マーダロック』ではニューヨークが舞台なのに殆どダンス教室の中で物語が完結する)ことが多くなるので、後期になればなるほど閉塞感が漂う上に退屈なダメダメ映画になっていく。その点、本作は都心から海、南の島といった複数のロケーションが楽しめる全盛期の作品なので安心(?)。

ミソジニストなのに女性のヌードシーンを入れているのを見ると、やっぱりフルチは典型的なインセルという感じがする。
女性に主体性を持たせず、悲劇が降りかかる入れ物のような扱いをしているのは全作品に共通している点。

そして、ゾンビ映画としては社会風刺もキャラクターの魅力も全くないので微妙なのと、後発の『地獄の門』や『ビヨンド』の方が個性的なゾンビ像が見れるのでまだ見所が多かったりする。本作もサメvsゾンビのシーンは強烈なものの、肝心の本筋は中身0。
ただ、それが"不快にならない程度の中身の無さ"なので、ショックシーンだけが印象に残るという奇跡的な出来の映画でもある……。
シャチ状球体

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