猫脳髄

サンゲリアの猫脳髄のレビュー・感想・評価

サンゲリア(1979年製作の映画)
3.8
ルチオ・フルチとダリオ・アルジェント。現代イタリアン・ホラー界の2大巨匠が骨肉の争いを繰り広げるきっかけとなった作品である。前年にジョージ・A・ロメロに「ゾンビ」を撮らせたアルジェントに対し、フルチはホラー本格デヴュー作として、プレ・ロメロの定石であったブードゥー魔術の産物としてのゾンビを復活させた。

ニューヨークに現れた無人と思われたヨット。閉じ込められていた怪人に警察官が襲撃されるが、海に落下して姿を消してしまう。ヨットの持ち主だった男の娘と記者の2人は、父の行方を追ってカリブ海の孤島をめざす。そこで医療に当たる医師の口から、島民が恐れる「蘇る死者」の話を聞かされ…という筋書き。

アルジェントの因縁は、要は「ゾンビ」の剽窃だ!というものだが、フルチは食人ゾンビではあるもののブードゥー魔術と言う古典に立脚し、特殊メイク(ユーロゾンビの嚆矢、ホルヘ・グロウ「悪魔の墓場」(1974)のジャネット・デ・ロッシが担当)も死体の腐敗したテクスチャーを考慮するなどの付加価値が見られる。さらに、キャラクターも立っており、海中でサメと格闘する(!)ゾンビや、400年前の墓からズモモモと蘇るミミズ塗れのコンキスタドールと見せ場も多い。ゴア表現(ドアの木片にブスー)もインパクトを残す。何より、孤島での出来事がいつの間にか世界の破滅に向かっているという展開がよい。

確かに、タイトルを"Zombi 2"にしてしまった(アルジェントはここに激怒)のはフルチの悪意と言うべきだが、ここから両者がバチバチで映画製作に臨んだことを考えれば、ホラー映画史の絶妙な綾と思えてしまう。
猫脳髄

猫脳髄