ドント

サンゲリアのドントのレビュー・感想・評価

サンゲリア(1979年製作の映画)
3.6
 1979年。再々見。ニューヨークに無人のヨットが漂着、捜索した警官が異様な風体の人間に襲われる。ヨットの持ち主の娘と記者は手がかりから、知り合ったカップルと共にカリブの小島に向かうのだが、そこでは死者が起き上がり生者を喰らっていた……
 無数の『ゾンビ』(78年)フォロワーの中でも最大級にヒットし、また面白く、さらに監督ルチオ・フルチの名声を高めた作品でもある。パク……便乗作品ではあるものの、残酷描写、土色でズルズルのゾンビたち、ゾンビの元祖たるブードゥーへの帰郷など、盆百のマネっこ映画とは一線を画している。盆百のマネっこ映画もあれはあれでイイんだけど、それはさておき。
 演出も脚本もけっこう気合が入っていて「無人(ゾンビはいる)のヨットがニューヨークに漂着」という序盤から、ヨットの中の手紙によって島の存在を知り、そこへ父親探しに出かける。南海の孤島、主な登場人物6人ほどのミニマムな環境に至る舞台移動の流れは自然で上手いこといっているし、その裏側の「広い場所」ではドえらい事態が進行していたという落とし方も見事だと思う。はじまりの「点」を探しに行っているうちに、点はとっくに「染み」となって拡大していた、というオチ。
 ブードゥーの呪いとは断定せず、十字軍?の墓なども出して結局ゾンビ発生の原因はよくわからねぇ、としているあたりも好ましい。特筆すべきはやはりグロで、土色ミミズズルズルゾンビとか、数百年前の兵士が土の中からヌックリと現れるとか、そういう大胆さが光る。またフルチが今後延々と撮り続ける「眼球への攻撃」も見られ、造りとしては後年の作でもこれを越えるものはないと思う。
『ゾンビ』フォロワーでありながら現在まで支持されているのは、これらの長所とご本家との差別化、便乗だけどこういうトコは勝ってるもんね! と言える強みがあるからだと思うのだ。『ゾンビ』ではすでにはじまっていた黙示録的光景を最後に、印象的なショットで持ってくるあたりやはり別格だなぁと感じる。自分では勝手に本作と『地獄の門』『ビヨンド』を「彼岸三部作」と呼んでいる。後の2本をご覧でない方はぜひ、フルチの描く「向こう側」の深化を観てほしい。
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