アカバネ

サンゲリアのアカバネのレビュー・感想・評価

サンゲリア(1979年製作の映画)
5.0
見世物精神ビンビン。

映画に求められるものは多い。社会的だったり普遍的だったりするメッセージやテーマ、濃厚な人間ドラマ、格調高い画をつくり上げる撮影技法などなど...ただ、そのなかに「映っているものの面白さ」があることも忘れてはならない。
「何故映画を観るのか」と問われれば様々な答えが頭に浮かぶが、私だったら「普段見られないものが見られるから」というのが真っ先に浮かぶ。それは映画が”映像表現に特化”した娯楽であるからこそ、そこで見られるものに期待してしまうからだ。
そういう意味においては、本作は最高だった。見世物精神溢れる画が沢山登場し、「俺はこういうのを見る為に映画を観てるんだった!」と思い出させてくれたのだ。

本作は他と比較してもゾンビの描き込みがかなり凝っていることが観るとわかる。
ゾンビ映画ではお馴染みのゴア描写のアレコレは勿論のこと、特殊メイクを担当したジャネット・デ・ロッシの功績があちこちに見られる。肉体が腐ったゾンビは肌が紙粘土を張り付けた(実際は植木鉢用粘土を塗ったらしい)ような感じで白くボテボテしていたり、元々地中に埋められた死体であったゾンビは頭部にミミズがウジャウジャ這っていたりと、生理的に不快な描写が多くて素晴らしい。
そんな数多くのこだわりのなかでも印象深いのが、ゾンビの”目”である。本作のゾンビは眼球が腐り落ちているそれを除いて、殆どが目を瞑っていたように思える。これは他と比べても異色なことであると共に、目を瞑っているというのが、目を開いている状態よりも「意思疎通が不可能」的な不気味さがより明確になっているようにも思える(気のせいかもしれないけど)。
また、そんなゾンビたちに漂う不衛生な雰囲気も興味深い。
先に言及した腐ったゾンビの描写でもそれは感じられるが、何よりも物語においてゾンビが発生した地であるマトゥール島がそれを際立てるのに一役買っている。あの島はいかにも謎の病原菌が蔓延していそうな雰囲気を漂わせており、かつて「暗黒大陸」と呼ばれていた頃のアフリカのイメージにも近い。インフラが整っているかも怪しく、アンの父親とメナード医師が設けた診療所も死にかけの患者でいっぱいという絶望的な状況。ムシムシした暑さがこちらまで伝わりそうなのも(良い意味で)最悪である。

といった感じでゾンビにばかり言及してしまったが、ロメロがゾンビを撮りながら人間やコミュニティ内争いもしっかり描いていたのに対し、フルチは本作においてゾンビと目潰しとサメとオッパイに全力を注いだのだ。あんなにも気持ち悪いゾンビや徹底したゴア描写はもう暫くは見たくないと思ったし、サメvsゾンビというのは地味でありながらも新鮮な映像体験ではあったし、股間は隠しているのにオッパイ丸出しでダイビングする女性を二度も見られたのは幸せだった。
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