半兵衛

赤い縄 〜果てるまで〜の半兵衛のレビュー・感想・評価

赤い縄 〜果てるまで〜(1987年製作の映画)
3.0
石井隆作品らしく村木と名美による愛欲のメロドラマが展開されるのだが、監督が演出のポイントを間違えたのか変態行為への願望が強い男女の同じ趣味があるんなら一緒に楽しみましょうと特に葛藤もなく開始してしまうのであっさりとした作品に。石井作品は話のあらすじよりもひたすら情念で押しきるタイプなので、本作のように薄味になってしまうと単調になって物足りなくなる。雨とか傘とかいつものギミックは登場しているけれど、ただ出しただけという感覚があるのでそれも味が薄くなった原因かと。

あと主人公のサラリーマンは緊縛という性的嗜好を誰にも言えず悶々としているけれどあからさまに緊縛のビデオを奥さんに見てよと言わんばかりに部屋に置いているのもどうかと思うし、それを見て妻が「あなたの趣味がわかりました」と理解しようものならいきなり髪を引っ張ったりビニールの紐でいたぶったりと強引プレイに突入するのも共感できない…まず初心者に優しく異常なプレイの特徴を教えて段階を踏んでいくのが先決じゃないのかい。そりゃ奥さんも実家に帰るよ。演じる阿部雅彦も平凡そうな顔立ちなのに、変なテンションで変態チックな主人公を演じているのが痛々しい。

電車で知り合った緊縛の跡がある女性・名美をストーカーばりに追いかけて色々あった末にいつしか二人による変態行為が後半はメインになっていくが、楽しそうとかエロいというより必死にプレイをやっているように感じてしまうのはロマンポルノ末期の現場の空気によるものなのか。到達点のラストも境地のような結末なのにどこかやるせなくなる。

終盤の唐突な奥さんの登場からの修羅場があまりにもテンプレすぎて笑ってしまう、あと「ここ重要なシーンですよ」と言わんばかりに使われるスローモーションの親切すぎる使い方はどうなのよ、それは学校で「ここテストに出ますよ」と言われているようで何か好きじゃない。

それでも水野尾信正の美しい撮影と、後半縛られっぱなしの岸加奈子(でも縛られている姿より水着の跡のほうが気になる)の熱演が素晴らしかったのでプラス0.1点。
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