ふき

ときめきサイエンスのふきのレビュー・感想・評価

ときめきサイエンス(1985年製作の映画)
2.5
学校のギークコンビがコンピューターで理想の美女を作り出してしまい、その美女によって成長していくSFコメディ作品。

まずリサを演じるケリー・ルブロック氏が、モデル出身だけあって居住まいだけで「理想の美女」を体現している。顔やスタイルがいいのはもちろんだが、喋るたびにうごめく唇が官能的でヤバい。そんな全盛期のスティーヴン・セガール氏並のオスでなければ落とせないような美女を、「私はあなたたちのもの」と華のないギーク少年ゲイリーとワイアットがゲットしてしまう奇妙さが、作品全体のコメディ感を支えている。
だが度胸のない二人は、表面的なセックス願望も成就できず、完全服従のはずのリサを持て余してしまう。リサはそんな二人を成長させるために、お姉さんのような立ち位置で敢えて面倒事を起こし、背中を押す――というか尻を蹴っ飛ばしていくのだ。この方向は意外性があって楽しかった。
ビル・パクストン氏演じるチェットや、ロバート・ダウニー・Jr氏とロバート・ラスラー氏演じる悪ガキコンビのギャグも面白く、見ていて退屈するシーンは少ないだろう。

だが、ゲイリーとワイアットの成長物語としてはダメすぎる。
本作で二人を成長させるためにリサが巻き起こす諸問題は、超常現象的美女のリサが超常現象的に準備したものだ。だからその件で周囲からチヤホヤされるのは、言ってしまえば「ズル」であり「自作自演」なのだが、リサがお膳立てした試練だと知らないゲイリーとワイアットはそれで本当に成長して恋人までゲットしてしまう。
まあそれは準備段階で、リサの影響で成長した二人が自力で解決するのは、当初から存在していた家族の様々な問題なのだな、と思っていると、こちらもリサがまるでお母さんのように「ダメでしょ!」超常現象的な罰を与えて解決(?)してしまう。
つまりゲイリーとワイアットは、最後までリサという超常的存在の手のひらの上で踊らされただけで、二人が現実の問題と向き合って成長するところまで描いていないのだ。キツい言い方をすれば、作品全体がボンクラ中学生が妄想する「みんなのピンチを救って彼女をゲットしちゃうオレ」でしかない。
それならそうでお気楽コメディとして軽快に終わればいいものを、感動的なハッピーエンドにするのだから、見終わった時に残るのは「いい気なもんだな」感。
せめて一箇所でも、自信を得た二人が現実の問題に立ち向かう描写があればなあ。

前述の通りギャグシーンだけでも退屈はしないので、ビルドゥングスロマン部分に目を瞑って楽しめる人にはオススメできるかな。
あと、二〇歳のロバート・ダウニー・Jr氏が見られるので、それもオススメポイント。可愛い目と悪ガキ感が最高です。
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