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ウォー・ゲームのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ウォー・ゲーム(1983年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

コンピュータ好きのごく普通の高校生デビッド。ある日、彼は様々なゲームが楽しめるホストコンピュータに偶然アクセスする。しかし、それは北米航空宇宙防衛司令部の軍事コンピューターだった!ハッキングした少年は、誤って核迎撃システムを作動させてしまう。現実となったゲーム。果たして核戦争の危機は回避できるのか?

天才パソコン少年が、ハッキングした相手が軍事コンピュータと知らずに戦争ゲームを始めたことから第三次世界大戦の危機を引き起こしていくSFサスペンスの佳作。
公開当時に劇場で見たが、今見ても充分面白い。
現在では、まず「ありえない」と思ってしまうが、セキュリティが進化していなかった80年代なら「あり得るかも」と思わせるところが面白い。
そして、オンラインゲームの可能性を予見し、ハッキングの危険性を大袈裟に、そして極めて分かりやすく演出しているのは、もっと評価されるべきだ。

核ミサイルの発射キーは2人同時に回さなければ発射されない。
片方の隊員は「私には出来ない」とキーから手を離してしまう。
この冒頭のミサイル発射の模擬訓練からサスペンスフル。
核ミサイル発射の仕組みがリアルで、最初は真面目な戦争映画かと思わせる。

いざという時、命令に従わない兵士がいたからと、政府はコンピュータに発射までのプロセスを任せ、人間を取り除く…なんて機械への過信そのもので、現在にも通じる警告がある。

機械が自律して学習していくディープラーニングや、機械が人間の知能を超え、権限すら奪うシンギュラリティなんて言葉がまだない時代の作品だが、進化したAIが人類の脅威に「なりかけている」設定が現実的で良い。

そこに登場するのは、どこかのメーカーが出す最新ゲームを先取りしたいと思い、1週間も学校を休んで片っ端から電話を掛けまくる(ハッキングする)コンピュータオタクの高校生の主人公。

今では当たり前に存在する、そんなゲームオタクの庶民が、偶然にも北米航空宇宙防衛司令部NORADの戦略コンピュータWOPR(War Operation Plan Response=戦争作戦計画対応)にアクセスしてしまう。
それを知らずに主人公は、オンラインで全面核戦争ゲームを開始。
ソ連側を選択し、お試しにと気軽な気持ちでラスベガスを攻撃するように設定するから、さぁ大変!
NORADではいきなりモニター画面にミサイルの軌道が提示され、その先にラスベガスが!
緊急事態を宣言し、パニックとなるが、ミサイルの軌道は突然プツっと途切れる。
狐につままれたような一同の表情が笑える。
ここまでは、子どものほんのイタズラがトンデモないことになってしまったというギャグだ。

FBIはそれがデビットの仕業であることを突き止め、彼をNORADに連行する。
「偶然だ」と主張するが信じてもらえない。
その間にもWOPRはさらなるシュミレーションをしている。
停止させるために電源を切ろうものならNORAD自体が攻撃を受けて壊滅した事にされ、ミサイルは即時発射されてしまう。
もはや、とことん戦う(ゲームする)しかないと、追い込まれる状況のサスペンスに変わる。

軍備を支配するAIに対するは、ただの高校生。
「オイオイ、大丈夫か?」と誰もが思う。
しかも全面核戦争だなんて、今で言う「無理ゲー」だ。
行き着く先はどう考えても人類滅亡であり、勝者などいない。

それをAIに教えるため、主人公が原始的な○×ゲーム(三目並べ)を始めるのが面白い。
三目並べは相手がミスしない限り、引き分けに終わるゲームであることを学んだWOPRは、今度はあらゆるパターンの核戦争シミュレーションを始める。
核戦争はどのようなパターンであっても必勝者がいないという結論に達し、核戦争の実行を中止する。

元々が「子どものイタズラ」から発生する物語なので、本作はSFとして軽んじられた扱いをされているが、本作の中で提示されたことは、実はそれ以降の映画やアニメに多大な影響を与えている。

ハッキングの危険性はいうに及ばず、大パネルがいくつもある司令室も、結局この映画からほとんど進化してないし、コンピュータオタクの描写も結局この当時のままだ。

コロナ禍でお家時間が増えた現在、どこかのゲームオタクが大それた事をしてるかもしれない。
この作品は再評価されるべきだ。
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