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黒帯 KURO-OBIのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

黒帯 KURO-OBI(2006年製作の映画)
4.8
昭和7年。戦時下の日本で、軍部が日増しに力を強めていたころ、幕府からの恩恵を受け、伝統空手を未来に伝える者たちがいた─義龍(八木明人)、大観(中達也)、長英(鈴木ゆうじ)の三人は師匠である柴原英賢(夏木陽介)の道場で空手の修行に励んでいた。
ある日、谷原分隊長(白竜)率いる憲兵隊が、英賢の道場を軍の管轄とすべくやってくる。強攻策に出る憲兵隊が長英の腕を切りつけたことをきっかけに、大観はその憲兵隊を一撃で倒してしまう。
静止も聞かず暴れまわる大観に対し、義龍は師匠の教えである「空手に先手なし」を守り自分から攻めだそうとはしない。やがて憲兵隊は撤退していく。
その後、「わが空手を継ぐべき者は、時がくればわかる」と言い残し、英賢が突然死去してしまう。残されたのは伝承の証である「黒帯」だった。
そんな折、再び憲兵隊が道場に現れる。今度は道場の明け渡しに加え、彼らの戦闘能力に目をつけた軍部が、空手を軍事訓練に組み込もうと彼らを管理下に置こうというものだった。
不本意ながら3人は軍と行動を共にするが、道中、谷原の子供たちが義龍に襲いかかる。闘わずして大敗を期した谷原が自刃したこと知り、義龍は一切の抵抗を見せずに腹を突かれ、谷底へと落ちていく。
数日後、畑田家の娘の花(近野成美)の献身的な介護もあり一命を取りとめた義龍。平穏な日々の中、改めて自分には空手しかないと鍛錬を再会する。
対照的に、大観は師の教えに背き、武器としての空手を憲兵隊に教え込んでいた。自らの強さを測りたい思いと訓練場の確保のため、大観は道場破りを次々に行い、町の道場を閉鎖へと追い込んでいく。
花が借金の肩代わりに連れ去られていったのを契機に、このふたりの線と空手は再び交わっていく……。
「空手に先手なし」「武とは優劣を争うものではなく護身のために鍛え上げるもの」という信念を持つ義龍と「空手とは優劣を争い強さを求めるもの」「空手は武器」という信念を持つ大観の、師の後継者の印「黒帯」と武人の信念を賭けた対立。「武とは空手とは何のために鍛え上げ強くなるものなのか?」を自らに問い武を鍛え上げていく義龍と大観の、空手家としての葛藤と熱い生きざま。
憲兵隊や人買いの奴らや道場主との格闘バトルなどでは、沖縄空手の八木明人、伝統派空手師範の中達也、本物の達人が見せる本物の迫力と技のキレに満ちた本格派の空手アクションが、楽しめる。特に、クライマックスの義龍VS大観の空手バトルは、死力を尽くす空手家同士の泥くさい死合いが息を飲む迫力。
武人ですら、時代の流れに飲み込まれそうになっても、未来に武道空手を継承する武人の誇り高い生きざまに心熱くなる本格派武道空手映画。
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